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外為マーケットコラム

日米短期金利に注目

 今週の為替市場では、4日に半年振りにプラスに転じた日米短期金利差や、2年債の金利差の動向に要注目です。また、各国で財政懸念が強まるなか、米財政収支の発表や米国債入札を控え、米財政への思惑も強まるでしょう。さらに中国では国会にあたる全国人民代表大会(全人代、14日まで)が開催され、11日には2月小売売上高や鉱工業生産などの重要経済指標が発表されることから、中国株の動向に注目が集まりそうです。

【日米実質短期金利に注目】
 昨年8月28日に、短期金融市場で3カ月物のドルLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)が約16年ぶりに円LIBORを下回って以来、日米短期金利の逆転(日金利>米金利)という事態が続いていました。ドル・円は日米短期金利の逆転を受けて1ドル=94円を割り込み、一時は84円台まで円高が進みました。そしてそれ以降ドル・円は94円を上抜けられずにいます。

 しかし、米国の景気回復基調が続く中、4日にドル金利が半年振りに円金利を上回りました(米金利>日金利)。円金利は2006年5月以来の低水準を記録し、ドル・円は88円台前半から89円台前半まで円安が進みました。そして日銀による追加緩和策への思惑や、週末の米雇用統計が予想を上回ったことで金利差がさらに広がり、ドル・円は90円台半ばまで上値を伸ばしています。

 このことからも、今後のドル・円を占う上では、短期金融市場での円金利とドル金利の関係が重要になると思われます。また、ドル・円の値動きは日米2年債金利差の動きと相関性があることから、2年債の金利差にも注目すべきでしょう。短期金利の再逆転(米金利>日金利)の状況が今後も継続し、2年債金利差が拡大すれば、現在のドル・円の下落トレンドは終焉し、今後はドル高・円安トレンドとなるでしょう。

 一方、短期金融市場で再び円金利>ドル金利の状況に戻れば、ドル・円の下落トレンドは継続することになります。円金利が高ければ、たとえ株式市場の上昇でリスク志向の動きが強まったとしても、円よりさらに金利の低いドルを調達する「ドルキャリートレード」が有利だからです。

【リパトリの円買いがドル・円の上値を抑えるか】
 ただ、3月中は季節的要因や実需の動きに注意が必要です。3月は例年、年度末決算を控えた国内の事業法人や機関投資家による海外資産の自国資金回帰(リパトリ)でドル売り/円買い需要が発生します。そしてこのことがドル・円の上値を抑える可能性があるでしょう。

 また各国で財政懸念が強まる中、米国では財政収支の発表や、総額740億ドルの国債発行が予定されています。米財政収支の09年度の財政赤字は過去最大だった08年度の3.1倍超となる1兆4170億ドルと史上初めて1兆ドルの大台に乗り、10年度の財政赤字も1兆5560億ドルと過去最高を更新する見通しです。米国の財政への懸念が強まれば、ドルは売られるでしょう。

 さらに中国の全人代では、最近の不動産価格や賃金の急上昇などを受けて、金融引き締めや株の取引制限などの景気抑制策をとる可能性があります。11日に発表される中国の重要経済指標や全人代を受けて中国株が下落すれば、世界的なリスク回避の動きが再び強まり、為替市場では円買いが強まる可能性があるでしょう。

【日銀による追加緩和策や、円売り介入は円安要因】
 一方、日銀による追加緩和策や、政府による円売り介入への思惑が強まっており、このことは円安要因となります。追加金融緩和で日本の金利が低下すれば、日米金利が拡大することになり、円安傾向が強まることになるでしょう。また、2010年度予算で外国為替資金特別会計の借入限度額が5兆円増額されたことが、政府による円売り介入への思惑を強めており、積極的な円買いを手控えさせるでしょう。

 このことからドル・円は、3月中は上値の重い展開が続くと見られますが、4月以降、米景気が本格的に回復に向かうようなら、いままでの円高トレンドが終焉し、円安トレンドに転換すると思われます。





2010年3月8日

(オーバルネクスト/二見 朱里)

株式会社オーバルネクスト 二見 朱里

担当
農産物、為替
信条
日々国際金融情勢を反映しながら動く為替相場に興味を持ち、現在は、得意な数学的なアプローチを中心に、さまざまな角度から分析を試みています。このコラムでは毎週の為替相場を予想する上で重要なポイントを分かりやすくお伝えできるように努力したいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
経歴
東京大学大学院数理科学研究科卒業後、2007年オーバルネクスト入社、情報企画グループに在籍

株式会社オーバルネクスト

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