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外為マーケットコラム

人民元上昇で恩恵を受けるのは豪ドル?

 今週の為替相場では、14日に予定されている米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の議会証言や米地区連銀経済報告(ベージュブック)、15日に発表される中国の一連の重要経済指標に注目です。また、財政危機に苦しんでいたギリシャへの支援策が明らかとなりましたが、ギリシャ政府による短期証券の入札も控えており、市場の不安が払拭されたかどうかが注目されます。さらに12日からの核安全サミットで、オバマ米大統領と胡錦濤主席の会談が予定される中、人民元の切り上げに対する思惑も強まる可能性があるため、注意が必要でしょう。

【ドル買い/円売りポジションの巻き戻し】
 注目された米3月雇用統計では、非農業部門雇用者数が16.2万人増と、雇用者数が07年3月以来の大幅増加となったことで、米景気の回復期待と、FRBによる早期利上げ観測が強まり、米10年債利回りは一時4%超まで上昇、ドル・円は1ドル=94.79円まで買われました。

 しかし、その流れは続きませんでした。6日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、「景気見通しの悪化やインフレ率が低下すれば、低金利を一段と長期化することもあり得る」としたほか、一部メンバーには、「早期利上げのリスクの方が、引き締めを遅らせた場合のリスクよりも大きい」という意見が出るなど、雇用統計を受けて強まっていた市場の早期利上げ観測をけん制する内容となりました。そしてこれを受けて、米金利は低下し、ドル・円も92.83円まで売られる展開となりました。

 最近の好調な米経済指標を受けて、米国の早期利上げ観測が強まり、市場ではドル買い/円売りポジションを積み上げていました。これは、IMM通貨先物の取組高で、大口投機家の円のポジションが、ロング(買い)からショート(売り)に転じていたことからも明らかです。しかし、FOMCを受けて早期の利上げ観測が後退したことで、そのポジションの巻き戻しが起こっています。

 ドル・円に関しては日米金利差に影響を受けやすいことから、今後発表される米経済指標の悪化や、バーナンキFRB議長の証言内容を受けて、利上げ期待が先行して上昇していた米金利がさらに低下すれば、引き続きドル・円には下げ圧力がかかると思われます。また、週序盤に発表される米貿易収支と経常収支では、ともに赤字幅が拡大する見通しとなっており、このことが米国の双子の赤字への懸念を再燃させる可能性があります。ギリシャの財政赤字懸念でユーロが売られたように、この流れが米国に飛び火すれば、今度はドルが売られるでしょう。

【米国のインフレ観測でドル高へ】
 一方、FOMC議事録では、「経済活動の加速やインフレの高まりを示唆する兆候が見られた場合、ただちに金融引き締めを開始する」とも指摘しました。

 週半ばには、3月の小売売上高や消費者物価指数が発表されます。3月の米小売業各社の既存店売上高が予想を上回る強い内容となったことから、小売売上高も予想を上回る可能性があります。また、世界的な景気回復で株式や商品相場が上昇基調を強めていることから、米国でもインフレ圧力が強まる可能性があります。米国で、個人消費の堅調さやインフレ率の高まりが明らかとなれば、米金利が一段と上昇し、ドルは買われることが予想されます。

 ただ、現在個人消費を後押ししているのは、株式市場の上昇を背景とした資産の増加とみられ、インフレ率においても、FRBが利上げの目安として注目しているのは、変動幅の大きいエネルギーなどを除いたコアのインフレ率です。

 そしてこの個人消費やコアインフレ率が本格的に上昇してくるには、賃金の上昇による所得の増加が必要です。しかし、今回の雇用統計では賃金が前月比で低下したことが示されており、就職そのものを諦めたり、パートタイムの職に甘んじる人々を含めた広義の失業率は18%に達しています。このことから考えると、今後も高水準の失業率を背景とした需給ギャップが引き続きインフレ圧力を抑制すると考えられます。

 よって米国のインフレ観測が強まるは当面先になると見られ、米金利の上昇や、ドル高も限定的となるでしょう。ドルの本格的な上昇には米国のインフレ観測が一段と強まることが必要だと思います。

【人民元上昇で恩恵を受けるのは豪ドル?】
 人民元の切り上げ観測が強まっています。米国では、オバマ大統領の輸出倍増計画を達成するために、米国の最大の対外貿易赤字国である中国に対し、人民元の切り上げを要求しています。また、中国でもいままでは切り上げ要求に対して反発する姿勢を示していたものの、人民元相場を維持するために、ドル買い/人民元売りの介入をし続けていたことから、国内のマネーサプライが増加し(市場に人民元が増加するため)、資産バブルやインフレ圧力が強まってきたことから、人民元高を容認せざるを得なくなっています。

 このことから、近く人民元が切り上げるとの見方が強まっており、人民元切り上げが行われた場合、円などのアジア通貨が軒並み上昇すると見られています。そして仮に人民元の切り上げがあった場合、豪ドルがその恩恵を受けるのではないかと思います。なぜなら、中国は豪州の最大の商品輸出相手国だからです。人民元高/豪ドル安となれば、豪州の輸出増加が期待されます。また、最近の景気の堅調さから、利上げ期待があることからも豪ドルは今後も上昇する可能性が高いと思われます。下の図は中国消費者物価指数と豪ドル・ドルの関係です。今後中国でインフレ圧力が強まり、人民元高圧力が強まれば、豪ドル・ドルも上昇する可能性が高いと考えられます。



2010年4月12日

(オーバルネクスト/二見 朱里)

株式会社オーバルネクスト 二見 朱里

担当
農産物、為替
信条
日々国際金融情勢を反映しながら動く為替相場に興味を持ち、現在は、得意な数学的なアプローチを中心に、さまざまな角度から分析を試みています。このコラムでは毎週の為替相場を予想する上で重要なポイントを分かりやすくお伝えできるように努力したいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
経歴
東京大学大学院数理科学研究科卒業後、2007年オーバルネクスト入社、情報企画グループに在籍

株式会社オーバルネクスト

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