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外為マーケットコラム

ドル・円は小幅ながら円高基調で推移か

 6月第3週は、ユーロ・ドルは上昇基調で推移しました。ユーロ圏の良好な経済指標やスペインなどでの国債入札が堅調だったこと、米国株の上昇などから、欧州の債務危機への過度の懸念が後退しました。

 ユーロ・ドルは1.24ドル超まで上昇しており、この水準を固めて一段と上昇できるかが注目されます。一方、ドル・円は1ドル=91〜92円前後のもみ合いから、米経済指標の悪化でやや円高方向に傾いています。

【ユーロ圏の悪材料への反応が鈍くなる】
 ユーロ・ドルは戻り歩調を続けてきましたが、大きく売り込まれた反動による買い戻しの動きも大きいようです。最近の上昇局面では、悪材料への反応が鈍くなりつつあり、好材料に反応しやすくなっています。「悪材料が少しでも出れば、とにかくユーロは売り」といった少し前までの状況と比べて、センチメントが改善しつつあります。

 NYダウの1万ドル回復にみられるように、欧米を中心にさらに株価が回復に向かえば、リスク志向の高まりから、ユーロ・ドルは一段と上昇することとなりそうです。1ユーロ=1.25ドルが目先のターゲットとなりますが、ここを上抜くと5月21日の高値1.2672ドル前後までの上げが視野に入りそうです。

 ただ、欧州の債務危機に関しては、根本的に問題が解決したわけではなく、新たな問題が顕在化して、ユーロ・ドルが再び下げに転じる可能性も否定できません。目先はスペインの財政赤字や信用不安などが材料視される可能性があり、こうした問題がクローズアップされるようなら、1.20ドルへ向けて下落することも想定されます。

【ドル・円はレンジ相場からやや円高か】
 ドル・円は狭いレンジでの取引が続いてきました。欧州の債務危機への懸念が後退して、リスク志向が高まってドル売りの動きとなっても、同時に円も売られることで、ドル・円は大きく動きにくくなっていました。

 17日の米消費者物価指数(CPI)が前月比0.2%の低下、6月の米フィラデルフィア地区連銀業況指数や米新規失業保険週間申請件数が弱い内容となり、景気回復ペースへの懸念が広がりました。この結果、ドルを売って円を買う動きから、ドル・円は若干円高に振れています。

 これまでの91〜92円前後のレンジを大きく外れる水準ではないですが、米経済指標の悪化が続くと、リスク回避の円買いから一段と円高が進む可能性もあります。その場合は、90円を割り込む水準まで円高が進みそうです。ただ、よほど米経済が悪化しない限りは、5月6日の87.95円まで円高が進むことはないでしょう。

 欧州の債務問題への懸念が一段と後退して、米国の経済指標も改善がみられるようなら、リスク志向の高まりから、逆に円安に傾くこととなりそうです。ただ、その場合も95円まで円安が進むのは難しいとみられます。

 6月第4週は、22日に米中古住宅販売、23日に英金融政策委員会議事録、米連邦公開市場委員会(FOMC)、24日に米耐久財受注などの発表が予定されており、その結果に左右されやすい展開が予想されます。

 また、19日に中国人民銀行(中央銀行)は為替相場メカニズムの改善の一環として、人民元相場の柔軟性を一段と高めると表明しました。23カ月続いた事実上のドルペッグ制を終了する用意があることを示唆ました。ただ、「人民元相場が大幅に変動・変化する根拠はない」としており、大幅な元の切り上げは見込み薄で、対ドルで緩やかな元高とする意向のようです。

 26日から始まる20カ国・地域(G20)首脳会議を控えて、人民元の柔軟化を表明したものと見られています。長期的には、元高・ドル安に傾くこととなりそうですが、目先は他通貨へどの程度の影響があるかは不透明な状況です。

【ドル・円とVIX指数の関係】
 VIX指数とは、シカゴ・オプション取引所が作り出した「ボラティリティ・インデックス」のことです。米国の主要株価指数のひとつである「S&P500」を対象とするオプション取引の値動きを元に算出しています。「恐怖指数」とも呼ばれており、投資家の心理状態を表す指標として利用されています。通常、株価が上昇するとVIX指数は低下、株価が下落するとVIX指数は上昇します。株価の急落局面ではVIX指数は急上昇するといった動きを見せます。

 グラフはこのVIX指数とドル・円のグラフを重ねたものです。ピンクがドル・円(右軸)で青がVIX指数(左軸)です。今年に入ってからは、おおむねこの2つは逆相関の動きを見せています。米国株の下落→VIX指数の上昇→リスク回避の動き→円買い(円高)といった流れとなるようです。株価上昇の場合は逆の動きとなります。

 5月以降の米国株の下落局面で、VIX指数は大きく上昇しており、ドル・円はリスク回避の動きから円買いが進んで、円高に振れています。6月中旬以降は逆相関の関係がやや崩れていますが、ドル・円相場を見る上では、米国の株価動向や金利などだけでなく、VIX指数にも焦点を当てると、「リスクへの恐怖」といった側面から、ドル・円相場の動向を見ることができるようになりそうです。



2010年6月21日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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