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外為マーケットコラム

ドル・円は82〜83円へ向けて円高が進む展開か

 8月第2週は、世界的な景気減速への懸念からリスク回避の動きとなり、ドルが円以外に対して買い戻されて、ユーロ・ドルは急落しました。一時1ユーロ=1.27ドル台半ばまで下落しました。これまでのユーロの先高期待は後退して、失速することとなりました。

 一方、ドル・円は米国の景気鈍化や金利低下を受けて円買いが進みやすい地合いにあることで、11日には一時1ドル=84.73円まで円高が進んで、約15年ぶりの円高水準となりました。その後は85〜86円台中心での動きが続いています。

【ユーロ・ドルは失速、下値を探る動きか】
 7月の中国の貿易統計で輸入額が鈍化したことや、鉱工業生産の伸びが縮小したことで、同国の景気減速への懸念が台頭しました。また、10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明では、これまでよりも景気認識を後退させています。

 米国や中国の景気減速への懸念から、11日の欧米市場では株価が急落しました。リスク回避の動きから、ドルは対円以外では買い戻されて、ユーロ・ドルは急落しました。その数日前までのユーロの先高期待のセンチメントが一変しました。

 また、ユーロ圏では財政問題や金融機関の健全性への懸念が再燃する兆しが出てきました。11日に欧州中央銀行(ECB)が実施した7日物のドル資金供給オペで、2行が合計4億3,000万ドルの供給を受けたことが明らかになったことで、ドル調達に支障を来たす金融機関が出てきたのではないかとの疑念が浮上しています。

 アイルランドのアングロ・アイリッシュ・バンクが政府による最大100億ユーロの追加支援を受けることについて、欧州連合(EU)から暫定的な承認を得たことが明らかになりました。その規模が予想以上だったことを懸念する声も出ています。

 さらにアイルランドでは17日に国債入札が予定されており、国債が安定的に消化されないようなら、ユーロ圏のソブリン・リスク(国に対する信用リスク)が再度クローズアップされる可能性も出てきそうです。

 これまでのユーロ・ドルの上昇は、ユーロの強さというよりも米国の景気回復鈍化に伴うドルの弱さという側面が強かったと言えるでしょう。リスク志向が後退したことで、ユーロ・ドルは1.25ドルへ向けて下値を探る展開となりそうで、ソブリン・リスク再燃なら1.20ドルへ向けて下落する可能性も出てきそうです。

【ドル・円は一段の円高の可能性高い】
 ドル・円は、依然として円高余地が残されています。世界的な株安やリスク回避の動きから円は買われやすい地合いにあります。10日のFOMC後の声明で、住宅ローン担保証券(MBS)の償還分を長期国債の購入に当てることを表明しました。これにより、米長期金利の一段の低下につながり、金利差の点からも円高への警戒感は根強いものがあります。

 また、ドル・円相場は10年物の米長期金利と連動しやすくなっています。米国の長期金利の低下は円高につながりやすく、政府と日銀による口先介入だけでは大幅な円安に振れる動きは想定しにくい状況です。

 11日〜12日にかけて、ドル・円は何度か85円を割り込みました。そこから一段の円高には進んでいないものの、世界的な株安、米金利安の流れが続けば、円買いの動きが加速する可能性が高そうです。そうなれば、82〜83円へ向けて円高が進むこととなるでしょう。

【8月の円高はいつまで続くのか】
 これまでに何度かご紹介してきた通り、ドル・円は8月は円高に振れやすい傾向があり、過去10年で8回は円高で終わっています。8月に円高が進みやすい理由としては、米国債の償還額が多いため、米ドルを円に換える動きが出やすいことが一因と言われています。2000年〜2009年の10年間では、2006年と2008年以外は円高となりました。

 今年も円高基調で推移していますが、この円高はいつまで続くのか、どれくらい円高に振れるのかを過去のデータを元に考察してみましょう。円高に終わった過去8回のうち、5回は月末近くがもっとも円高が進んだ時期となります。表をご覧いただくと、月末最終営業日か、その近辺にもっとも円高となったケースでは、その月は一本調子か、それに近い格好で円高が進みます(「8月の動き」の矢印参照)。

 月末以外で最も円高が進んだケースでは、14日(2002年)、16日(2005年)、17日(2007年)と月の半ば、ちょうどお盆の時期に円高が進みやすいようです。その時期に円高が進むと月末にかけては、やや円安で推移しやすくなります。

 今年はすでに中旬まで経過しており、現時点から円安に振れるか、さらに円高が進むかの分岐点となります。ここ数日で円安基調へ転換しないようなら、月末へ向けて一段と円高が進む可能性が出てきそうです。 なお、円高に振れた年では、7月末に比べて最小で2.3%、最大で5.9%の円高が進みました。今年は7月末のドル・円は86.47円となっており、2.3%の下落なら84.48円、5.9%の下落なら81.37円まで円高が進むこととなります。



2010年8月16日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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