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外為マーケットコラム

ドル・円はレンジ相場、ユーロ・ドルは堅調か

【混迷深める中東・北アフリカ情勢】
 混乱が続くリビアではカダフィ政権と反政府勢力の間で戦闘が続くなど、混乱の度合いは増しています。中東や北アフリカ情勢の悪化が金融市場やコモディティ価格に与える影響は依然として続きそうな状況です。

 2日には、リビア情勢の緊迫化による供給懸念から、ニューヨーク原油は終値で102ドル台まで上昇、4日には104ドル台後半まで急騰しました。原油高は各国の景気回復に悪影響を及ぼし、インフレ懸念を強めることとなります。一方、ドル建て金現物価格はインフレ懸念や資金の逃避先として買われて一時1,440ドル近くまで上昇して史上最高値を更新しました。

 なお、3日にリビアのカダフィ大佐が、ベネズエラのチャベス大統領が提案した和平案を受諾したと報じられたことから、金も原油も一時的に下落しました。ただ、リビア政府と反政府勢力との衝突が続いて混迷を深めており、事態の収拾や原油輸出の正常化には時間がかかりそうです。原油価格は高値圏で推移しており、中東や北アフリカでの混乱が続くと各国の株価や景気に悪影響を及ぼすこととなるとみられます。

 ユーロ・ドルは欧州中央銀行(ECB)による早期の利上げ期待から、上昇を続けてきました。3日のECB理事会では政策金利は据え置かれたものの、その後のトリシェ総裁の記者会見ではインフレ率の上昇へ「強い警戒」を示したことで、早期の利上げ観測が高まっています。

 ユーロ・ドルは3日に1ユーロ=1.39ドル台後半まで上昇、4日の米雇用統計発表後の荒れた動きの中で、一時1.40ドル台に乗せました。ただ、終値では1.40ドル台を維持できていません。1.40ドルの大きな節目を超えくると、節目達成感からいったんは利益確定の売りに押されて上値を抑えられる可能性もあります。ただ、欧州の財政懸念が材料視されなければ、ECBによる利上げ期待から、今後も一段と上昇する展開が見込まれます。

 ポルトガルの10年債利回りは依然として7.3〜7.5%の高水準に高止まりしています。ドイツ債との利回りの差も4.2〜4.3%前後と高水準で推移しており、この水準を見る限りは同国に対する財政面の懸念は払しょくされたわけではないようです。このところ、欧州の財政問題への懸念は材料視されていませんが、この問題が蒸し返されると、ユーロには圧迫要因となる可能性も出てきそうです。

 11日にはユーロ圏首脳会議されます。欧州の財政不安解消のために欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の規模や能力の拡充に向けて、具体的な方針が打ち出されるかどうかが注目されるところです。具体策が打ち出されるとユーロ圏の財政問題への懸念払しょくへの大きな一歩となるでしょう。

【ドル・円は狭いレンジでもみ合い】
 ドル・円は1ドル=81〜83円台での狭いレンジで推移しています。中東情勢の混迷を受けて、円は安全通貨としてスイスフランとともに買われやすい地合いにありましたが、81円台半ばでは下げ止まりました。日本では財政面での懸念もあり、一段の円買いが進みにくい状況のようです。

 米国の経済指標は良好なものが多く、製造業を中心に景気は回復基調にあり、本来なら米長期金利が一段と上昇してもおかしくない状況です。ただ、リビア情勢の緊迫化などにより、リスク回避の動きから米国債は買われやすく、米長期金利は上昇しにくくなっています。また、米連邦準備理事会(FRB)による6,000億ドルの国債買い入れも米長期金利の上昇を抑える要因となっています。

 4日の2月の米雇用統計では、失業率は8.9%と、前月の9.0%から低下(事前予想は9.1%)。また、非農業部門雇用者数は19.2万の増加(事前予想は19.6万人の増加)、民間部門雇用者数は22.2万人の増加(事前予想は20.0万人の増加)となりました。発表直後は乱高下したものの、中東情勢の混乱と原油価格の影響に左右され、米長期金利が低下して、ドル・円の上値は抑えられました。

 中東・北アフリカ情勢が落ち着きを見せるまでは、米長期金利は上昇しにくいとみられ、ドル・円も大きく円安に進みにくい状況となりそうです。このため、目先は81〜83円台でのレンジ相場が続くとみられます。

【ユーロ・ドルとユーロ圏と米国の金利差の関係】
 欧州中央銀行(ECB)による利上げ期待により、ユーロ・ドルは上昇基調で推移して、一時1ユーロ=1.40ドル台に乗せました。金利差が為替相場の動きと密接な関係にあることは良く知られています。ここではユーロ圏と米国の金利差とユーロ・ドルがどのような関係にあるかを見ていきましょう。

 グラフは青がユーロ・ドルの価格の推移(右軸)、赤がユーロ圏と米国の10年物の金利差(左軸)、ピンクが2年物の金利差です。なお、金利差は「ユーロ圏の利回り−米国の利回り」です。

 グラフを見る限り、10年物の金利差に比べて、2年物の金利差の方がユーロ・ドルとより近い動きを見せています。これは期間の短い債券の方が、より金融政策の影響を受けやすいためのようです。

 ECBはインフレを警戒して利上げムードが高まりつつあります。一方、米国では米連邦準備理事会(FRB)は6,000億ドルの国債を買い入れる量的緩和第2弾を今年6月まで継続する意向です。このため、利上げに動きたいECBと、金利を抑えたいFRBのスタンスの違いが金利差に表れ、ユーロ・ドルの堅調な動きにつながっているようです。



2011年3月7日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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