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外為マーケットコラム

ドル・円は方向感を欠く動きか

【ドル・円は80〜83円台での推移か】
 4月27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0〜0.25%に据え置くとともに、金利を長期間異例の低水準に据え置く方針をあらためて示しました。

 また、6,000億ドルの国債買い入れプログラムを予定通り6月末で終了するとともに、金融引き締めを急がない方針を示しています。さらに原油高など商品相場の上昇によるインフレ圧力の影響を「一時的なもの」とし、長期的なインフレ期待は引き続き安定しているとの認識を示しました。

 米国では、原油高が物価上昇につながる可能性はあるものの、欧州のようにインフレはそれほど懸念されるような状況ではないとの見方が広がっています。FOMCでの緩和姿勢の継続により、米10年債利回りは引き続き、3.20〜3.50%前後での推移が見込まれ、米国の金利水準だけからはドル・円は大きく上昇しにくい状況が続きそうです。

 なお、27日に米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは日本の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に修正しました。ただ、円売りの動きは一時的なものにとどまり、長期にわたって円売りの材料とはなりにくいとみられます。

 ドル・円は大幅な円安は見込みにくい状況で、頭打ちとなっている米長期金利の動向を眺めつつ、80〜83円台でのレンジ相場が見込まれます。80円接近では介入警戒感が円高を抑制することとなりそうです。2日にアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者が死亡したと報じられるとドル買いの動きとなっていますが、継続的なドル買いの材料となるかが注目されます。

【ECBの追加利上げ観測根強いが高値警戒感も】
 ユーロ・ドルは堅調な流れを維持して、28日には1ユーロ=1.48ドル台後半まで上昇しました。米国での金融引き締めまではまだ時間がかかりそうな上、ECBによる追加金融引き締め観測が根強く、ユーロの支援材料となっています。29日に発表されたユーロ圏の消費者物価指数(CPI)・速報値は前年比2.8%上昇となり、大方の事前予想(2.7%上昇)を上回っており、追加引き締め観測につながりそうです。

 これまで、ユーロ・ドルが下げるたびにECB当局者が追加利上げを示唆するコメントを出してユーロの高値に誘導する動きが見られましたが、今後もユーロの下落場面では同様のことが繰り返されそうです。原油高を中心とする輸入物価の高騰によるインフレ圧力を緩和するためにユーロの高値誘導は続きそうです。

 ただ、当局のそうした意図だけでユーロが高値を維持し続けられるとは限りません。ユーロ圏の債務問題も徐々に深刻さを増しているためです。ギリシャでは10年債利回りが15%超、2年債利回りは26%超まで上昇しています。ギリシャの財政再建は困難との見方が広がり、同国の国債保有者との間で返済期間延長、金利減免、元本削減といった債務再編が避けられないとの見方が広がっています。

 また、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)に支援を要請したポルトガルも、10年債利回りは9.6%を超えています。EUやIMFの管理下で財政再建が進むかどうかも不透明です。

 現時点では財政・債務問題よりも追加の引き締め観測の方が勝っており、ユーロ・ドルは引き続き堅調な推移を続け、1.50ドルへ向けて上昇を続ける展開となりそうです。ただ、ユーロ・ドルは今年1月以降、大幅な上昇を続けており、どこかで大きな調整が入る可能性も否定できません。

【ユーロ・ドルの高水準の買い越し続く CFTC建玉明細】
 米商品先物取引委員会(CFTC)は現地時間の毎週金曜日にその週の火曜日時点での建玉明細を発表しています。この中で、大口投機家の売り越し幅、買い越し幅の変動は、相場の方向と連動性が高いケースが多く、特に注目されています。

 グラフはユーロ・ドルの大口投機玉の建玉明細のグラフで、水色はユーロ・ドルの終値(これのみ左軸)、緑は買い玉、ピンクは売り玉、赤は買い玉から売り玉を差し引いたネットポジションです。赤のグラフがゼロより下にあるときは大口投機玉は売り越し、赤がゼロより上なら買い越しとなります。

 水色の価格と赤のネットポジションは連動性が高いことが見て取れます。1月中旬以降のユーロ・ドルの上昇局面では、買い玉が増加する一方で、売り玉が減少しており、ネットでは買い越しが大きく増加しました。3月下旬以降は、売り玉が横ばいとなる一方で、買い玉が増加しており、買い越しが増加傾向にあります。投機筋の先高期待の強さがうかがえます。

 買い越し枚数は4月26日時点では68,279枚となり、前週(4月19日時点)の62,195枚と比べて増加しました。過去の例では買い越し幅が5万枚付近に達すると過熱感から相場が調整するケースが見受けられました。今回は3週続けて6万枚を超えているものの、それほど極端な過熱感はないようです。

 それだけユーロ圏のインフレ懸念や金融引き締め観測によるユーロ・ドルの先高期待が根強いということでしょう。ただ、ユーロ・ドルの上昇が長く続いて、大口投機玉の買い越しも増加が続いており、買い玉の手じまいによるユーロ・ドルの急落には注意しておきたいところです。



2011年5月2日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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