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外為マーケットコラム

ドル・円は方向感が出にくく、レンジ相場が続きそう

【ドル・円は79〜83円台でのレンジ相場か】
 2月以降、ドル・円と米長期金利の相関性が以前の高い状況に戻っており、ドル・円の動向は米国の2年債や10年債利回りの動向を眺めつつの推移が見込まれます。

 米国金利の下落要因としては、米連邦準備理事会(FRB)の追加金融緩和策による6月までの総額6,000億ドルの国債買い入れ、ユーロ圏周辺国での財政不安、さえない米経済指標などがあげられます。

 また、米国金利の上昇要因としては、良好な経済指標による米国の景気回復観測、大量の国債発行に伴う米国債の需給悪化、米国の株高などがあります。

 5月6日に発表された米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比24.4万人増と予想を大きく上回り、雇用情勢の改善を感じさせるものとなりました。ただ、米国の経済統計は景気回復を明確に示すものばかりではなく、景気動向は一進一退の動きとなることが見込まれます。このため、米長期金利も明確な方向性が出にくくなりそうです。

 ギリシャの債務問題が注目を集める問題となっており、支援策がまとまらずに元本削減などの債務再編が懸念されるようなら、安全資産として米国債が買われ、米長期金利が低下してドル・円は上値を抑えられやすくなります。

 このところの米10年債利回りは3.1〜3.2%台で方向感なく推移しています。短期的には3.0%を割り込むような悪化は考えにくく、逆に3.3%を超えて大きく上昇するようなことは想定しにくい状況です。このため、ドル・円はギリシャの債務問題や欧州や米国の経済指標を眺めつつ、1ドル=79〜83円前後のレンジ相場となることが見込まれます。

【ユーロ・ドルはユーロ圏周辺国の債務問題が焦点】
 ユーロ・ドルは、5月はじめに1ユーロ=1.49ドル台まで上昇する過程では、ギリシャやポルトガルなどユーロ圏周辺国の債務問題はあまり材料視されませんでした。これらの国々の債務問題はユーロ・ドルの上昇途上とそれほど大きな変化を見せていないものの、最近は相場を左右する大きな要因となっています。

 特にギリシャの話題がユーロの相場を振り回しています。同国の債務再編への懸念、ユーロ圏離脱報道、欧州連合(EU)などによる追加支援観測といった材料に一喜一憂しつつ、上値の重い動きを見せています。同国への懸念からギリシャの2年債の利回りは25%超まで上昇、10年債は15%超まで上昇しています。なお、ポルトガルの10年債利回りはピーク時の9.7%台からは低下したものの、9.2%台と高水準にあります。

 ギリシャやポルトガルなどユーロ圏周辺国の債務問題が解決へ向けてメドが立つまでは、ユーロ・ドルは当局者のコメントや経済指標、商品相場の動きを眺めつつ、1ユーロ=1.40ドル前後での方向感を探る動きなりそうです。

 12日に欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーであるベルギー中銀のクーン総裁は、ECBによる利上げは決して1回限りのものではないとの見解を示して、追加利上げの余地があることを示唆しました。これまでにユーロが下げると、ECB当局者から利上げを示唆してユーロ高への誘導を狙うコメントが何度も出されてきましたが、これもそのクーン総裁のコメントもその一連の動きと見ることができます。

 このため、ECBによる6月の利上げ観測は後退しているものの、7月以降は利上げの可能性があり、ユーロ圏周辺国の債務問題が落ち着きを見せれば、1.45ドル向けて上昇に転じる動きが見込まれます。ただ、債務問題が長引くようだと1.40ドルを割り込んでも下げ止まらず、一段と下落する展開となりそうです。

 16日に開催されるユーロ圏財務相会合で、ギリシャ支援に対してどのような方向性が打ち出されるかが注目されます。この会合について、ドイツのアスムセン財務次官は「ギリシャ債務危機について、いかなる決定も下さない」と述べるなど、ドイツが及び腰となっており、支援には国によって温度差があり、救済策の取りまとめには難航が予想されます。

【米株高の一因となったドル安一服か】
 米国株は良好な企業決算、米国の金利が低水準にとどまるとの見方などから堅調な推移を続けてきましたが、ドル安も米株高の一因となっています。グラフはドル指数とNYダウの関係をグラフにしたものです。

 ドル指数とはドルの強さを示す指標で、ユーロ、円、英ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフランといった6通貨で計算されるドルの強さを示す指数のことで、ドル・インデックスとも呼ばれます。ユーロ・ドルやドル・円などの単一の通貨と比べてドルの強弱を把握しやすいと言われています。各通貨によるドル指数の構成比率はユーロが57.6%、円が13.6%、英ポンドが11.9%、カナダドルが9.1%、スウェーデンクローナが4.2%、スイスフランが3.6%となっています。

 グラフではドル指数の下落、すなわちドル安の局面ではNYダウは上昇しているケースが多くみられます。ドル安による米国輸出企業の収益拡大が株高につながっているようです。なお、グラフの期間のドル指数とNYダウの相関係数は-0.83と強い逆相関の関係にあり、ドル指数の下げが株高に寄与していることがわかります。

 これまで株高の一因となってきたドル指数ですが、5月4日に3年ぶりの低水準である72.696まで低下しました。ただ、その後は上昇(=ドル高)に転じており、株の上値を抑える要因となる可能性が出てきそうです。



2011年5月16日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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