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外為マーケットコラム

ドル・円は80〜83円台でのレンジ相場か

【ドル・円は80〜83円台を軸とするレンジ相場か】
 ドル・円は緩やかに円安方向に振れています。17日には、武田薬品工業や東芝によるスイスの企業の買収報道でスイスフラン・円だけでなく、ドル・円とクロス円が幅広く買われました。企業買収による市場への影響は一時的なものにとどまりそうですが、19日には日本の第1四半期の国内総生産(GDP)が予想を下回り、ドル・円は一時1ドル=82円台まで上昇しました。

 18日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、金融緩和策を正常化するいわゆる「出口戦略」へ言及されており、また、一部当局者の間ではインフレ懸念が高まっていることも明らかとなりました。ただ、米国では早期に利上げに動くような状況ではありません。

 このところの米経済指標は悪化が目立つことで、米10年債利回りは3.10〜3.20%近辺で上値重く推移しています。経済指標がさえないことで、FOMC議事録を受けての金利の先高観だけでは長期金利を押し上げるのは難しく、米長期金利は現在の水準近辺での推移が続きそうです。

 また、ギリシャの債務問題は依然として懸念され、米国債は買われやすい状況が続きそうで、米長期金利の大幅な上昇は望みにくくなっています。また、日本のGDPの落ち込みは円売りにつながりやすいですが、米長期金利が上がりにくいこともあり、ドル・円は80〜83円台でのレンジ相場で推移しそうです。緩やかに上昇しても83円付近では上値を抑えられることとなるでしょう。

【ギリシャ問題がユーロの圧迫要因に】
 16日に開催されたユーロ圏財務相会合では、ポルトガル向けに3年間で総額780億ユーロの緊急融資を実施することを承認しました。また、同会合では、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)に提供する保証額を7,260億ユーロ(1兆ドル)とすることで合意しました。これでユーロ圏周辺国の財政問題に備えるためのセーフティネットが強化されたことになります。

 ポルトガル向けの緊急融資が承認されたことで、ポルトガルの債務懸念は後退しそうです。ただ、ギリシャについては引き続き不透明感が漂います。

 17日にユーログループのユンケル議長は、ギリシャ債務が償還期限の延長といった「ソフトな再編」へと向かう必要性があると述べており、ギリシャの債務再編の可能性を認める発言をしました。ただ、この意見に同調する声は少なく、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーであるノボトニー・オーストリア中銀総裁は同案を否定、ドイツのメルケル首相も債務再編に強く反対するなど、ギリシャの支援では足並みが揃いません。

 また、ECBのシュタルク専務理事は、ギリシャが債務再編を実施した場合、ECBはギリシャ国債を適格担保として受け入れることができなくなるとの見解を示して、ギリシャの債務再編に反対の姿勢を示しました。

 ユーロ・ドルは1ユーロ=1.40ドル台半ばから1.43ドル台半ばまで上昇したものの、ギリシャの債務問題への懸念から、戻り歩調は腰折れして、20日には1.41ドル台まで再び下落しました。格付け会社フィッチ・レーティングスがギリシャの格付けを3段階引き下げたこともユーロには圧迫要因となりました。

 ギリシャの債務問題は簡単には解決への道筋は見つからないとみられます。ユーロ・ドルは今後の追加利上げ観測が支援材料とはなるものの、ギリシャ問題が圧迫要因となって、1.40〜1.43ドル台での推移となりそうです。ギリシャ問題への懸念が一段と深刻なものとなれば、1.40ドルを割り込む可能性も否定できません。

【豪ドル・ドルと金価格の関係】
 資源国通貨と言われるカナダドルや豪ドルは資源価格の動きと連動しやすいという性格を持っています。ここではドル建て金現物価格と豪ドル・ドルの関係について確認してみましょう。

 豪州は鉱物資源が豊富で、金の生産量は中国に次いで世界第2位となっています。グラフはドル建て金価格と豪ドル・ドルの推移ですが、ほぼ同じような足取りで動いています。グラフの期間中の両者の相関係数は0.95となり(1.00で完全に一致)、極めて相関が高いと言えます。

 要するに豪ドル・ドルはドル建て金価格の動向に極めて影響を受けやすいと言えるでしょう(逆のことも言えると思われます)。金価格が5月2日に1577ドル台まで上昇して高値を更新すると、豪ドル・ドルも1豪ドル=1.1012ドルまで上昇して、変動相場制移行後の最高値を更新しました。

 その後は両者ともに高値からは下落しています。金は資金の逃避先(セーフヘイブン)として、金融市場が混乱した際には買われる傾向があります。金価格は一時的に修正しているものの、投資家の金への投資熱は冷めてはおらず、調整が一服して再び上昇に転じそうな状況です。その場合、豪ドル・ドルも歩調を合わせて上昇することとなりそうです。



2011年5月23日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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