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外為マーケットコラム

ドル・円は米経済指標次第で緩やかな上昇か

【ドル・円は米経済指標改善なら緩やかな上昇か】
 1日のISM製造業景況指数が予想を上回る内容となり、米国の景気鈍化懸念が後退したことで、米10年債利回りは3.20%近辺まで上昇しました。ギリシャやポルトガルの債務懸念が影響して若干低下したものの、7日に米ADP雇用統計が予想を大幅に上回り、新規失業保険申請件数が改善すると米10年債利回りは再び上昇しました。ただ8日の、米雇用統計が予想より悪く、失望を誘う内容となり、再び3%近くまで低下しました。

 ドル・円は米経済指標の改善や米長期金利の上昇から、一時81円台半ばまで上昇しました。ただ、そこから上の水準では輸出筋によるドル売り/円買いの動きなどに抑えられて上値を伸ばすことができないでいます。8日の米雇用統計を受けてドル売りの動きから80円台半ばまで下落しました。

 かといって大きく下げるわけでもなく、80〜81円台での狭いレンジでのもみ合いが継続しています。米経済指標が上向けば、ドル・円は緩やかに上昇して82円前後まで上昇しそうです。ただ、米経済指標がさえないようなら、1ドル=80〜81円台での推移が続きそうです。

 今週は12日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録、14日に6月の米生産者物価指数(PPI)、米小売売上高、15日に6月の米消費者物価指数(CPI)、鉱工業生産指数の発表があり、その動向が注目されます。

【ギリシャだけでなく、ポルトガル、イタリアも懸念材料に】
 ギリシャの議会で中期財政再建法案とその関連法案が可決されました。これを受けて、2日にはユーロ圏財務相会合が電話会合を開催して、ギリシャへの追加融資が承認されました。なお、8日には国際通貨基金(IMF)理事会もギリシャ向けの融資を承認しました。

 一時はギリシャの債務危機への懸念が後退したかに見えました。その後は、銀行や保険会社など民間部門の保有するギリシャ国債の自発的なロールオーバー(借り換え)などについて協議される予定となっていました。

 ところが、格付け会社スタンダード&プアーズがギリシャ国債のロールオーバーを選択的デフォルトと見なす可能性があると報じられたことから、欧州中央銀行(ECB)による利上げ観測で1ユーロ=1.45ドル台後半まで上昇していたユーロ・ドルは失速しました。

 さらに格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスがポルトガル国債を4段階格下げしたことも圧迫要因となっています。なお、格付け会社にユーロ圏の動向は振り回されており、欧州の当局者からは格付け会社に対する批判が相次いでいます。

 7日のECB理事会では政策金利を大方の予想通り、0.25%引き上げて1.50%としました。その後のトリシェ総裁の記者会見では、インフレを警戒する姿勢を維持して、今後の追加利上げの可能性を示唆、さらにはポルトガル国債を資金供給の担保として受け入れることを表明しました。

 将来的な利上げ期待はあるものの、ギリシャやポルトガルなどの債務懸念は依然として残ることから、ユーロ・ドルは上値の重い展開を強いられそうです。また、ユーロ圏の5月の失業率は9.9%と高水準で、5月の小売売上高は前年比マイナス1.9%となるなど、経済指標も減速気味です。また、8日の米雇用統計が予想を下回る結果となり、リスク指向も後退しています。

 債務問題がイタリアに波及する懸念も出てきています。ユーロ圏の債務問題で、欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領は11日にEU当局者による緊急会合を開催すると報じられました。8日にはイタリアの10年債利回りは5.27%前後まで上昇して、約9年ぶりの高水準となっています。イタリアの大手銀行株も2年ぶりの安値圏へ下落しています。イタリアが今後の新たな火種となる可能性も出てきています。

 また、15日には欧州の金融機関91行を対象にしたストレステスト(健全性審査)の結果が公表されます。検査に不合格の場合は資本増強を求められます。各国の債務問題と合わせて注目材料となりそうです。

 ユーロ・ドルは、ギリシャ、ポルトガル、イタリアなどの債務問題が懸念材料として根強く残り、1ユーロ=1.40ドルへ向けて軟調な展開となりそうです。ただ、債務問題について、解決策が打ち出されてくるようであれば、1.40ドル前後で下げ止まり、1.40〜1.45ドル近辺でのレンジ相場で推移しそうです。

【ユーロ圏周辺国の利回りは依然として上昇傾向】
 ギリシャの債務危機への懸念が一時後退したことで、ギリシャをはじめユーロ圏周辺国の国債利回りは一時的に低下していました。ただ、低下したのは短期間にとどまり、再び上昇傾向にあります。

 ギリシャは今回の危機を乗り越えても、増税、緊縮財政、国家資産の売却などにより財政の建て直しを計らなければ、いずれデフォルト(債務不履行)が避けられないとの見方が根強く残っています。このため、同国の国債利回りが急速に低下するような事態とはなっていません。

 また、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスがポルトガル国債を4段階引き下げたように、ユーロ圏周辺国へ債務危機が波及するとの懸念もあります。グラフは債務問題が懸念されるユーロ圏周辺国の10年物の国債利回りですが、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルについては一時的に利回りが低下したものの、再び上昇に転じています。

 ギリシャがEUやIMFによる融資で一時的に危機をしのいでも、根本的な解決を図らないことには、債務問題は繰り返して材料視されてユーロ・ドルの圧迫要因となるでしょう。これらの国々の財政状況はユーロへの信頼を低下させる可能性もあり、事態を慎重に見守りたいところです。



2011年7月11日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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