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外為マーケットコラム

米国債格下げの影響に注目

【S&Pが米国債を格下げ】
 米連邦債務上限引き上げ問題は、民主党と共和党が期限の土壇場で合意したことでデフォルト(債務不履行)は回避されました。ただ、この問題が落ち着くと米国の景気動向が注目要因となりました。最近の米経済指標は予想を下回るものや従来に比べて悪化するものが目立っています。この結果、米国株は下落基調にあり、リスク回避の観点からドルよりも円やスイスフランが買われやすくなっていました。

 スイス国立銀行(中央銀行)は、スイスフラン高を是正するために3日に政策金利の目標レンジを切り下げました。これでスイスフラン高が抑えられたものの、効果は一時的なものにとどまりそうです。

 一方、円高基調が続いていることで、政府・日銀は4日に単独で円売り介入を実施して、ドル・円は1ドル=77円付近から80円台前半まで上昇しました。一時的に円売り介入の効果はあったものの、翌日には78円台まで下落するなど、持続的な効果には疑問を投げかける声も出ています。今後、必要に応じて継続して介入が実施されるかが注目されます。

 なお、日銀は4〜5日に予定していた金融政策決定会合を急遽4日のみで終了させました。政策金利を0.00〜0.10%に据え置くとともに、国債や社債、上場投資信託(ETF)などの買い入れ枠を現行の10兆円から15兆円に増額、固定金利オペ(公開市場操作)の供給枠を現行の30兆円から35兆円に増額することを決定しました。ただ、日銀の決定に市場は反応薄でした。

 そうした中、5日に格付け会社スタンダード&プアーズは米国債の格付けを最上級の「AAA」から「AA+」に一段階引き下げました。この対応を協議するために8日に主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁の緊急電話会議が行われ、G7は為替市場の無秩序な動きには適切に協力するなどの声明を発表しています。

 外為市場では米国債の格下げの影響はそれほど極端なものとはなっていません。ただ、週明けの米国株価指数先物の時間外取引では、NYダウが一時300ドル以上の下げを見せるなど、リスク回避の動きにつながっています。

 なお、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは米国の格付けを当面「Aaa」で維持することを確認しています。また、格付け会社フィッチ・レーティングスは2日にトリプルA格付けを維持する方針を明らかにしています。ただ、フィッチは今月中に行われる米国格付け見直しで、見通しが「ネガティブ」に引き下げられる可能性を排除しないとしています。

 リスク回避の動きが加速すれば、ドル・円は1ドル=76〜77円へ向けて円高が進む可能性が出てきますが、77円割れでは円売り介入への警戒感から、極端な円高とはならないでしょう。米国債の格下げがS&P1社のみにとどまれば、いずれこの問題は沈静化して、リスク指向が回復して、1ドル=80円回復へ向けて円安に振れることとなりそうです。いずれの場合も1ドル=77〜80円のレンジ内での動きとなり、大きくレンジを逸脱することはないでしょう。

【ユーロ・ドルはレンジ相場で推移か】
 4日の欧州中央銀行(ECB)理事会では、政策金利を現行の1.50%に据え置きました。その後のトリシェ総裁の記者会見では、物価動向を注視する姿勢は示しつつも、ユーロ圏の景気の下振れリスクに言及しました。景気の先行きに警戒感を示したことを受けて、4日の欧米の株式市場は大幅安となり、ユーロ・ドルも下落しました。

 なお、トリシェ総裁はECBが国債買い入れを再開したことも示唆しました。ただ、買い入れたのはポルトガルとアイルランド国債のみで、財政問題への懸念が高まっているイタリアとスペイン国債は対象外と報じられたことで、両国の国債利回りは上昇しました。

 イタリアとスペインの10年債利回りは、いずれも6%台まで上昇しています。市場では、7%を超えると金融市場での資金調達に支障を来たすとみられており、今後の動向が注目されています。両国の10年債利回りと、ドイツ10年債との利回りの格差はいずれも一時3.80〜3.90%前後まで拡大しました。特に過去1カ月間での拡大傾向が顕著で、1.50〜2.00%前後も拡大しており、それだけ両国の財政状況に関する懸念が高まっていると言えそうです。

 ただ、5日には「ECBがイタリアとスペインの国債購入で合意した」と報じられたことで、両国の利回りは若干低下しており、今後の動きが注目されます。このところのユーロ・ドルは1ユーロ=1.40〜1.45ドル台でのもみ合いが続いていました。今後も米国債の格下げの余波やスペインやイタリアの財政問題を眺めつつ、1.40〜1.45ドルのレンジでの推移が続きそうです。

【ユーロ圏周辺国の利回りは依然として高水準】
 21日のユーロ圏首脳会議でギリシャの第2次支援について合意して、債務危機への懸念はいったん後退したかに見えました。グラフはユーロ圏周辺国の10年債の利回りのグラフです。確かにギリシャ、アイルランド、ポルトガルの利回りはピーク時に比べて低下しています。

 もっとも、これは相当に高水準だったものが、やや落ち着きを見せているといった状況に過ぎません。これらの国の利回りがさらに低下して、利回りの下げトレンドが続くようなら債務危機の後退は本物となるでしょう。

 ギリシャの2年債利回りは7月20日に40%前後まで上昇、その後は25%台まで急低下した後に再び33%台まで上昇しています。40%という水準そのものが通常ではありえない水準でしたが、それが下げトレンドに転じていないこと自体、ギリシャの債務問題は依然として先行き不透明感が根強いと言えるでしょう。

 最近危惧されているのが、スペインやイタリアの利回り上昇です。これらの国々の利回りの上昇ペースは緩やかではあるものの、経済規模も大きく、万一、救済が必要となった場合は現状の枠組みの中で救済し切れないとの見方も広がっています。このため、今後はギリシャやポルトガルだけでなく、スペインやイタリアの動向も注目されます。



2011年8月8日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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