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外為マーケットコラム

市場心理の改善で、ユーロ・ドルは堅調か

【ドル・円は78円超では上値を抑えられそう】
 ギリシャの債務問題への支援が進展するとの期待感から、欧米市場の株価はまずまず堅調で、ドルも円も売られやすくなっており、ドル・円は1ドル=77円台後半まで上昇しています。一時は1ドル=76円近くまで下落して、75円台へ突入する可能性も出ていたものの、それは回避されて円安に振れました。

 今後は引き続きギリシャの債務問題と米国を中心とする各国の経済指標を眺めながらの推移となりそうです。米国では、3日に発表された1月の雇用統計で失業率が8.3%、非農業部門雇用者数が前月比24.3万人増となり、大幅に改善されました。これで米国の景気に楽観的な見方が広がり、市場心理が好転しています。

 1月25日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、米連邦準備理事会(FRB)が異例の低金利を長期化するとの方針を表明した後、米10年債利回りは一時1.7%台まで低下しました。ただ、その後の米経済指標の好転やギリシャの債務問題進展への期待感から、2%付近まで上昇しています。米長期金利の上昇はドル・円の上昇につながりやすくなります。8日に発表された日本の経常収支の黒字額は前年比43.9%減の9兆6289億円となり、大幅な減少となっており、経常黒字の大幅な減少も円売りの動きにつながったようです。

 市場心理の改善が一段と進んで、市場参加者のリスク志向が高まると、米長期金利の一段上昇につながり、ドル・円には支援材料となります。ただ、大幅な円安に振れるようなことは想定しにくく、ドル・円は1ドル=76〜78円台で推移しそうです。78円超まで上昇しても、日本の輸出筋によるドル売りの動きなどから上値は抑えられやすくなりそうです。

 注目される経済指標としては、13日の日本の第4四半期国内総生産(GDP)、14日の日銀政策金利発表、米1月小売売上高、15日の独第4四半期国内総生産(GDP)・速報値、ユーロ圏第4四半期域内総生産(GDP)・速報値、米1月鉱工業生産・設備稼働率、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録、16日の米1月住宅着工件数・建設許可件数、17日の米1月消費者物価指数などがあります。

 なお、前週も書いたとおり、2月は過去10年間で7回が円高に振れており、季節的に円高に傾きやすくなります。このため、円高への警戒は怠らないようにしたいところです。

【ギリシャが財政緊縮関連法案を可決】
 ギリシャでは、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)からの追加支援の見返りに一段の財政緊縮策を求められています。ギリシャでは緊縮策の受け入れをめぐって、連立与党の党首による協議が実施され、9日に合意に達したと報じられました。

 最終的には今回の融資は承認されて、3月20日の国債の大量償還は無事に乗り切り、無秩序なデフォルト(債務不履行)は回避されるとの見方が広がっています。また、欧州委員会のレーン委員は民間債権者とのギリシャ債務交換協議が事実上まとまったと述べており、ギリシャの債務問題は徐々に進展しています。

 ただ、9日のユーロ圏財務相会合では、ギリシャ議会の承認が先決として、同国への次回融資への決定を先送りしました。その後、13日にギリシャ議会では財政緊縮関連法案を可決しており、一歩前進しました。ギリシャはこれまでも財政再建策を取り決めても実行が不十分で、今回も本当に実行に移せるのか、懐疑的な見方が広がっています。ギリシャはこれまでにも再三支援を受けてきたものの、他国からは自助努力が不十分と受け止められており、今回は乗り切れても、いずれ再び同じような問題が持ち上がる可能性もあります。

 目先はギリシャの債務問題への懸念が後退したことで、ユーロ・ドルは堅調な推移を続けそうです。一時1ユーロ=1.33ドル台まで上昇しており、市場心理の好転が続くようなら、1.34〜1.35ドルまで上昇することとなるでしょう。

 ギリシャで具体的に緊縮財政策を実行に移せるかが注目されますが、15日に開催予定のユーロ圏財務相会合で追加融資が承認されるかどうかが焦点となります。ここで承認されずに再度先送りされるようなら、ギリシャ問題の先行き不透明感が高まり、ユーロ売りにつながりそうです。また、格付け会社の動向にも注意したいところです。格付け会社スタンダード&プアーズは、10日にイタリアの銀行34行を格下げしました。格付け会社の動きが市場の圧迫要因となる可能性もあり、その動向が注目されます。

【VIX指数の低下で豪ドル・ドルが堅調】
 2週間ほど前に、先進国の株価指数を元に作成されたMSCIワールドインデックスと豪ドル・円に強い相関があると説明をしました。世界的な株価の上昇で、MSCIワールドインデックスが上昇すると豪ドル・円も上昇する傾向があり、両者には強い連動性があることが確認できました。豪ドルは世界の株価との関係が非常に強い指標であり、今回は豪ドル・ドルとVIX指数を取り上げます。

 グラフはVIX指数と豪ドル・ドルの価格を表示したものとなっています。VIX指数とはボラティリティ・インデックスの略で、別名「投資家の恐怖指数」などとも呼ばれます。米国の株価指数であるS&P500のオプションのボラティリティを元に算出されており、数値が高いほど先行き不透明感が高いとされています。株価が何らかの事情で急落したり、下げが続いて市場の不安心理が高まると、VIX指数は上昇する傾向があります。

 逆に株価が堅調で金融市場が落ち着くと、VIX指数は低下する傾向があります。このようにVIX指数は市場参加者の不安心理を計る指標として注目されています。米国株が堅調だと、他の国での株式上昇につながりやすく、世界的に不安心理が後退しやすくなる傾向もあります。

 豪ドルは世界の株価との連動性の高い通貨であり、豪ドル・ドルとVIX指数はおおむね逆相関の関係にあります。VIX指数が上昇すると豪ドル・ドルは下落、VIX指数が低下すると豪ドル・ドルは上昇する傾向があります。最近は世界的に株価が堅調に推移しており、VIX指数が低下傾向にあることで、豪ドル・ドルも上昇基調で推移しています。ギリシャの債務問題への懸念も後退しつつあり、市場参加者のリスク志向が高まっており、この傾向が続くと豪ドル・ドルの堅調な動きは続きそうです。



2012年2月13日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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