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外為マーケットコラム

ドル・円は材料に振り回される展開か

【当局者のコメントに注目】
 3日に発表された3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、米国での緩やかな景気回復の動きを受けて追加緩和を必要とする意見が後退しました。これまで米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が追加緩和に含みを持たせていたものの、期待感が一気に後退することとなりました。

 ただ、6日の3月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比12万人増にとどまり、大方の事前予想(同20.5万人増)を大きく下回りました。これを受けて、米国での追加緩和観測が一気に高まり、米10年債利回りは2.05%前後となり、約1カ月ぶりの水準まで低下しました。

 下振れした米雇用統計を受けて、ドル・円やクロス円全般は円高に振れており、ドル・円は1ドル=82円台半ばから81円台前半まで急落しました。追加緩和観測が後退したり、高まったりと、経済指標や当局者のコメントでセンチメントが大きく変化する状況が続きそうです。

 9〜10日に日銀の金融政策決定会合が開催されます。政策金利や資産買い入れ基金の規模は65兆円で変更はない見通しです。長期国債の買い入れ規模は、3月末時点で6兆3,000億円程度にとどまっており、買い入れの上限としている19兆円までかなり余裕があります。金融政策に大きな変更はないと見られますが、日銀の白川総裁の記者会見は注目されます。ここで金融緩和策を強調するようなら、円高進行が一服する可能性が高まりそうです。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の大口投機玉は、円の売り越しが3月27日時点で6万7,622枚まで膨らんだものの、4月3日時点ではやや縮小して6万5,108枚となりました。依然として高水準の売り越しであり、円の買い戻しの余地がありそうです。ただ、6日の米雇用統計の発表で大きく円高に振れており、円の売り越し枚数は大きく減少しているものとみられます。

 9日には米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長の講演が予定されており、追加緩和に含みを持たせるかどうかが注目されます。もし、追加緩和観測が高まるようなら、ドル・円には圧迫要因となるでしょう。また、今週は中国の経済指標の発表が相次ぎます。中国の預金準備率の引き下げの期待が高まっており、もし実施されれば、各国の株高につながり、ドル・円やクロス円は円売りの動きから上昇しやすくなりそうです。

 ドル・円は各国の経済指標や日銀の白川総裁やFRBのバーナンキ議長の講演、中国の金融政策の動向に振り回される展開となりそうです。1ドル=80〜83円台での推移が見込まれます。円買いが進むようなら、1ドル=80円前後まで円高が進むこととなり、逆に円売りに振れるようなら、1ドル=83円台まで円安に傾きそうです。

 今後の主な経済指標としては、9日に中国3月生産者物価指数、中国3月消費者物価指数、10日に中国3月貿易収支、日銀政策金利、11日に米地区連銀経済報告(ベージュブック)、12日に米2月貿易収支、米新規失業保険申請件数、13日に日銀・金融政策決定会合議事録、中国3月鉱工業生産指数、中国第1四半期国内総生産(GDP)、中国3月小売売上高、米3月消費者物価指数、米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値などがあります。

【次の火種はスペインか?】
 4日にスペイン国債の入札が不調に終わり、欧州の債務問題への懸念が再燃しつつあります。この結果、同国の10年債利回りは5.8%前後まで上昇して、約4カ月ぶりの高水準となりました。また、イタリアの利回りも5.5%近辺まで上昇しています。スペインは対GDPに占める債務残高が2011年末の68.5%から2012年末には79.8%になるとの見通しを公表したことで、財政問題への懸念が広がり、利回りが上昇しました。

 ギリシャが3月の民間債務者による債務減免や欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)の支援により、国債の大量償還を乗り越え、ギリシャへの懸念は後退しました。ギリシャ発の世界的な金融市場の混乱は回避された格好です。ただ、市場参加者の間では、ユーロ圏の債務問題は根本的な解決にはほど遠いとの見方が多く、スペインが次の火種として浮上してきそうです。

 ユーロ・ドルは、今年2月以降は1ユーロ=1.30ドル付近が支持線として機能してきました。ただ、スペインの財政懸念などを背景にセンチメントが一段と悪化すれば、1ユーロ=1.30ドル割れの可能性が出てきます。米雇用統計の下振れで一方的なユーロ売り/ドル買いの動きには振れにくいとみられます。このため、1ユーロ=1.30〜1.33ドル台でのレンジ相場となりそうです。

【4月は豪ドルやポンドが買われやすい季節】
 グラフは2002〜2011年の10年間について、主要通貨や商品などが4月の月足が陽線になった比率を示しています。なお、陽線とは終値が始値よりも上昇したことを示しています。マーケットでは、市場や銘柄によりますが、季節的に過去と同じような動きをするものもみられます。

 ユーロ・円などのクロス円やドル・円が陽線になりやすいということは、円安に振れやすいということを示しています。豪ドル・ドルやポンド・ドルなどの陽線確率が高いということは、豪ドル高、ポンド高になりやすく、裏を返すとドル安に振れやすいということになります。

 このグラフによると、4月は豪ドル・ドル、ポンド・ドルが上昇する確率が90.0%と極めて高いです。豪ドル・円も70.0%、ポンド・円も80.0%と高い水準にあり、豪ドルやポンドは上昇しやすくなっています。豪ドルは上値の重い動きが続いていますが、今後上昇に転じて陽線で引けるかどうかが注目されます。なお、過去10年間の4月の平均値幅は、豪ドル・ドルが0.0412ドル、豪ドル・円が4.40円、ポンド・ドルが0.649ドル、ポンド・円が7.88円となっています。

 その一方で、ドル・円やユーロ・ドルは50.0%とバイアスがなく、ユーロ・円も60.0%とそれほど強い偏りはありません。通貨以外では、NY原油(WTI原油)、ドル建て金、NYダウはいずれも70.0%となり、上昇する可能性が高そうです。



2012年4月9日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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