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外為マーケットコラム

ドル・円は上値重い展開か

【日銀の追加緩和はおおむね想定の範囲内】
 4月24〜25日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)声明で、政策金利を据え置き、政策金利を少なくとも2014年終盤まで据え置くとの認識を示しました。景気見通しは若干引き上げられました。ただ、失業率は低下しているものの、依然として高いとの見方が示されました。FOMC後の記者会見で、バーナンキ議長は必要ならためらわずに追加緩和措置を実施すると表明しています。

 米経済指標はさえないものも多く見られるため、今後、景気の先行き不透明感が広がるようなら追加緩和への期待感が広がりそうです。ただ、第1四半期の米国企業の決算は事前予想を上回るケースが多く、すぐに追加緩和が必要になるような状況ではなさそうです。今後、米国の景気動向や雇用情勢が悪化を続けるようなら、次回(6月)のFOMCで追加緩和へ向けた動きが出てくる可能性が高まりそうです。米経済指標の悪化や追加緩和期待により、米長期金利は上がりにくくなるため、ドル・円は上値を抑えられやすくなりそうです。

 27日の日銀の金融政策決定会合では、政策金利は据え置きとしました。追加緩和については、資産の買い入れ基金の規模を5兆円増額して70兆円としました。期間6カ月の固定金利オペを5兆円減額する一方で、期待の大きかった長期国債の買い入れを10兆円増額しています。ETFは2,000億円増額、J−REITを100億円増額、また、買い入れ対象とする国債の残存期間は「1〜2年」を「1〜3年」に延長しています。日銀の発表はおおむね市場関係者の想定の範囲内となりました。

 スペインのリセッション(景気後退)入りや、米国の経済指標の悪化などから、相対的に円は買われやすくなっています。また、日銀の追加緩和の発表を終えて、材料出尽くし感もあり、円は買い戻しが入りやすい状況となっています。このため、ドル・円は1ドル=78〜81円台での推移が見込まれますが、上値の重い展開が続きそうです。

 今後の主な経済指標としては、1日に米4月ISM製造業景況指数、2日に独4月雇用統計、ユーロ圏3月ユーロ雇用統計、米4月ADP雇用統計、3日に欧州中央銀行(ECB)政策金利、米新規失業保険申請件数、米4月ISM非製造業景況指数、4日に米4月雇用統計があります。日本はゴールデンウィークで営業日の日数が少なく、東京市場が休みの日はアジア時間の値動きが小幅なものとなりそうです。

【欧州の政局や景気動向に注目】
 欧州では債務問題に加えて、政局の混迷も先行きの懸念材料となっています。フランス大統領選では第1回目の投票で、現職のサルコジ大統領が対抗馬のオランド候補にリードを許しました。5月6日の決選投票の結果が注目されます。また、オランダでは財政赤字削減を巡る対立から内閣が総辞職しており、連立政権が崩壊するなど政局が混迷しています。

 それ以上に懸念されるのは欧州の景気動向です。スペインの今年第1四半期の国内総生産(GDP)は前期比0.3%減となり、2四半期連続でのマイナス成長となり、リセッション(景気後退)入りしました。財政問題が懸念されるスペインの景気悪化はユーロにとって圧迫要因です。

 また、注意しておきたいのは格付け会社の発表です。格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は26日にスペインの格付けを引き下げ、見通しを「ネガティブ」としました。この影響を受けるため、S&Pはスペインの銀行11行の格付けも引き下げています。スペインのリセッション入りとともにユーロにはネガティブな材料です。

 今後のユーロ・ドルは、米国や欧州の経済指標、欧州の政局の動向、スペインなどの国債の入札状況に一喜一憂しながらの推移が見込まれます。今後、5月2日にポルトガル、3日にスペインとフランスの国債入札が予定されており、5月6日はフランス大統領選挙の決選投票が実施されます。

 ユーロ・ドルは1ユーロ=1.30ドル付近では底堅く、その後、戻り歩調にありますが、1ユーロ=1.30〜1.32ドル台でのレンジ相場でのもみ合いの域を出ていません。欧州の政局混迷やスペインの財政懸念があっても、1.30ドルを割り込んで下落するような事態にはなっていません。これは米経済指標の悪化でドルが上げにくくなっているという側面もあります。このため、あまり極端な値動きは見込みにくく、1ユーロ=1.30〜1.33ドル台での推移が続きそうです。

【顕著なバイアスが出にくい5月の外為市場】
 昨年までの過去10年間の月足を元に、5月に主要通貨が上げやすかったり、下げやすかったりといったバイアス(偏り)があるかどうかについて、確認してみます。グラフは2002〜2011年の10年間について、主要通貨や商品などが5月の月足が陽線になった比率を示しています。陽線とは終値が始値よりも上昇したことを意味しています。ドル・円やクロス円が陽線になりやすい(すなわち上昇しやすい)ということは、円安に振れやすいということを示しています。

 なお、過去10年間の各通貨の5月の平均値幅は次の通りです。通貨間で標準化するためpipsで表示しています(カッコ内は4月の値幅)。ドル・円は487(480)、豪ドル・円は501(440)、豪ドル・ドルは502(412)、ポンド・円は923(788)、ポンド・ドルは778(649)、ユーロ・円は695(657)、ユーロ・ドルは677(551)です。ドル・円や豪ドル・円はそれぞれ4.87円、5.01円の値幅ということになります。豪ドル・ドルは0.0502ドル、ユーロ・ドルは0.0677ドルとなります。

 いずれも5月の値幅が4月の値幅を上回っています。4月は豪ドルやポンドは上昇バイアスが出やすい月でしたが、値幅は5月のほうが大きくなっています。5月は一本調子でトレンドを描きにくいものの、月間での値動きは大きくなる傾向があるようです。



2012年5月1日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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