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外為マーケットコラム

欧州債務懸念で円は買われやすい地合い続く

【ドル・円とクロス円の円高傾向は続く】
 ギリシャのユーロ圏離脱問題は先行き不透明であり、スペインの財政問題や金融システム不安がマーケットへ負のインパクトを与えています。欧米株や日本株が下落、通貨ではユーロの下げがきつく、資源国通貨なども売られています。その一方で、リスク回避の動きからドルと円が買われて、安全資産として米国債も買われています。

 ユーロ、円、英ポンドなど6通貨で構成されるドルの強さを示すドル・インデックスは6月1日に83.542まで上昇、依然としてドル買いの動きが続いています。また、米国債が買いを集めて、米10年債利回りは1.45%前後まで低下しており、過去最低水準まで低下しています。

 このところの米経済指標が低調なことから、ドルと円では円の方が買われやすく、ドル・円は一時1ドル=77円台後半まで下落しました。また、円は対主要通貨で買われて、ユーロ・円は一時1ユーロ=95円台後半まで円高が進みました。ユーロ・円、豪ドル・円、ポンド・円などのクロス円での円高基調は継続しています。

 スペイン情勢を中心とする欧州債務問題による円高進行のため、日本の金融当局も有効な円高対策を打ち出せないでいます。今後は、ギリシャやスペインの動向を眺めつつ、ドル・円、クロス円ともに円高に振れやすい地合いが続きそうです。ドル・円は1ドル=78円を一時割り込んでおり、76円台まで円高が進む可能性がありそうです。仮に円売り介入を実施しても、効果は一時的なものとなるでしょう。ユーロ・円はスペインやギリシャ情勢次第で、1ユーロ=93〜94円台まで下落の可能性があります。

 今後の主な経済指標としては、5日にオーストラリア準備銀行(RBA)政策金利、米5月ISM非製造業景況指数、6日に豪第1四半期国内総生産(GDP)、ユーロ圏第1四半期国内総生産(GDP)・改定値、欧州中央銀行(ECB)政策金利、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、7日に豪5月雇用統計、日本4月景気動向指数、英中銀(BOE)政策金利、米新規失業保険申請件数、8日に日本第1四半期国内総生産(GDP)・2次速報、日本4月経常収支・貿易収支、独4月経常収支・貿易収支、米4月貿易収支があります。

【スペインとギリシャが火種】
 ギリシャは6月17日の再選挙を前に各種世論調査が発表されており、最近の調査では緊縮財政の賛成派と反対派の支持率がほぼ同水準となっています。反対派が勝った場合、市場は混乱してユーロ圏離脱が近づくこととなりそうです。ただ、賛成派が勝っても、欧州連合(EU)と協議して、緊縮政策をやや緩和させ、多少の時間稼ぎをする程度で、財政の破綻とユーロ圏離脱は、そう遠くない将来に現実のものとなる可能性があります。

 一方、スペインの銀行バンキアがスペイン政府へ190億ユーロの資本注入を要請しましたが、これは当初想定した2倍の規模で、同国で銀行救済の動きが広がることが警戒されています。銀行支援に多額の資金が必要となることで、スペインの財政の一段の悪化が懸念されます。また、スペインの中では裕福とされるカタルーニャ州が財政難でスペイン政府へ支援を要請するなど、財政問題が噴出しています。こうした状況のため、スペインの10年債利回りは一時6.7%前後まで上昇しており、危険水域とされる7%に接近しつつあります。

 欧州委員会のレーン委員(経済・通貨問題担当)は、スペインが2013〜2014年の財政健全化策を提示すれば、財政赤字を対GDP比3%にする期限を2014年に1年延ばす用意があると表明しました。スペインの財政事情に配慮して、ユーロ圏で反緊縮の機運が広がることを警戒しての発言とみられます。

 また、イタリアのモンティ首相は、債務危機の影響が波及しつつあり、借り入れコストの引き下げのため、欧州中央銀行(ECB)が国債の買い入れを再開すべきとの考えを示唆しました。一方で、ECBのドラギ総裁は、「ECBは政策の欠如は補えない」とユーロ圏首脳のこれまでの小出しの対応を厳しく批判しています。

 ギリシャやスペイン情勢で、さまざまな発言は出ているものの、問題の解決に結びつく内容のものはあまりなく、6月6日のECB理事会や6月28〜29日の欧州連合(EU)首脳会議で、有効な対策が打ち出されるかが注目されます。ECBがユーロ圏の国債購入に動くか、購入を示唆するようなことがあれば、ユーロの弱気のセンチメントが好転することとなりそうです。

 今後のユーロ・ドルは、6月17日のギリシャの再選挙、6月28〜29日のEU首脳会議に向けて、ギリシャのユーロ圏離脱懸念やスペインの財政・金融システム不安などにより、上値の重い展開が続きそうです。一時1ユーロ=1.23ドルを割り込んでおり、ギリシャやスペイン情勢に打開策が出てこなければ、1.20〜1.22ドルまでの下げが見込まれます。

【ポジティブなバイアスがかかりやすい6月の通貨市場】
 昨年までの過去10年間の月足を元に、その月の通貨の傾向を見ると、先月(5月)はバイアスのかかりにくい月となっていました。6月がどうなるかを確認しておきます。グラフは2002〜2011年の10年間について、主要通貨や商品などが6月の月足が陽線になった比率を示しています。陽線とは終値が始値よりも上昇したことを意味しています。ここで、ドル・円やクロス円が陽線になりやすい(すなわち上昇しやすい)ということは、円安に振れやすいということを示しています。

 6月はユーロ・ドルが50.0%と偏りがないものの、他の通貨は60.0〜70.0%とポジティブなバイアスがかかりやすいと言えそうです。ただ、あまり極端な数字ではなく「どちらかと言うと上げやすい」といった程度の偏りになります。

 グラフでは、ポンド・円が70.0%と高いものの、ドル・円、豪ドル・円、豪ドル・ドル、ポンド・ドルが60.0%となるなど、「やや上げやすい」といった程度の偏りになります。なお、通貨以外では、NY原油(WTI原油)が80.0%と上げやすいものの、ドル建て金が30.0%、NYダウが20.0%と下げやすい月であることがわかります。

 なお、過去10年間の各通貨の6月の平均値幅は次の通りです。通貨間で標準化するためpipsで表示しています(カッコ内は5月の値幅)。ドル・円は444(487)、豪ドル・円は456(501)、豪ドル・ドルは371(502)、ポンド・円は748(923)、ポンド・ドルは663(778)、ユーロ・円は549(695)、ユーロ・ドルは514(677)です。ドル・円や豪ドル・円はそれぞれ4.44円、4.56円の値幅ということになります。豪ドル・ドルは0.0371ドル、ユーロ・ドルは0.0514ドルとなります。いずれも6月の値幅が5月の値幅を下回っており、6月は5月に比べて1カ月間の値動きが小さくなる傾向があります。



2012年6月4日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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