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外為マーケットコラム

ギリシャの総選挙を控えて模様眺め気分が広がりそう

【欧米金融当局への追加緩和期待は根強い】
 17日にギリシャの総選挙を控えており、スペインの金融システム不安が根強かったことから、市場では欧州中央銀行(ECB)や米連邦準備理事会(FRB)に対する追加金融緩和期待が広がりました。ECBは6日の理事会で政策金利を据え置き、ドラギ総裁は理事会後の記者会見で追加の長期の資金供給オペを否定しました。ただ、「行動する準備は整っている」と、債務危機の状況に応じて必要なら対応する用意があることを示しています。

 一方、米国ではアトランタ連銀のロックハート総裁、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁、FRBのイエレン副議長らが、経済情勢次第では追加緩和へ前向きな姿勢を示しました。7日の米議会証言でバーナンキ議長は、金融情勢が悪化すれば行動する用意はあると発言したものの、早期の追加緩和への手掛かりを与えませんでした。ただ、市場では追加金融緩和観測が根強く残っています。

 追加金融緩和への期待に加えて、ユーロ圏財務相がスペインの銀行支援で合意したことから、リスク回避の動きから下げが続いていたユーロや資源国通貨が上昇に転じる一方で、それまで買われていたドルや円は売られやすくなりました。ドル・円は1ドル=77円台後半まで売られた後に徐々に値を戻しており、79円台を回復しています。一本調子での上昇にはつながりにくいと見られるものの、目先は80円を回復して、緩やかに上昇する展開が見込まれます。ユーロ・円は一時1ユーロ=95円まで下げた後に戻り歩調に転じて、100円台まで上昇しており、こちらも目先は緩やかな上昇となりそうです。

 今後の主な経済指標としては、12日に英4月鉱工業生産指数、13日に日本4月機械受注高、独5月消費者物価指数、ユーロ圏4月鉱工業生産指数、米5月生産者物価指数、米5月小売売上高、14日にニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利、日本4月鉱工業生産指数、ユーロ圏5月消費者物価指数、米第1四半期経常収支、米5月消費者物価指数、米新規失業保険申請件数、15日に日銀金融政策決定会合と政策金利、米6月NY連銀製造業景気指数、米5月鉱工業生産・設備稼働率、米6月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値などがあります。

【スペインの銀行支援で合意】
 9日にユーロ圏財務相は電話会議を行い、スペインの銀行支援に向けて最大1,000億ユーロの支援を行うことで合意しました。欧州金融安定ファシリティー(EFSF)か7月に発足する欧州金融安定メカニズム(ESM)を通じて支援が実施されます。スペインの銀行支援の報道を受けて、欧州債務危機への過度な懸念が後退しています。

 ECBは6日の理事会で政策金利を据え置き、長期の資金供給オペの実施も否定しました。ただ、これは17日のギリシャの総選挙やスペインの金融システムの混乱などに備えるため、手段を温存したようです。今後、金融市場が一段と混乱するような事態となれば、政策金利の引き下げ、過去に2回実施したのと同様な長期の資金供給オペ、南欧諸国の国債の買い入れなどに動く可能性が出てきそうです。

 なお、FRBにしても7日の議会証言で、バーナンキ議長が早期の追加緩和に言及しなかったものの、17日にギリシャ総選挙後に予想される金融市場の混乱や米国の景気減速など、悪材料が続くようなら追加金融緩和へ舵を切る可能性が高いみられます。今は手段を温存して、状況を見守っているという段階でしょう。なお、19〜20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では現在実施しているツイストオペの延長などが検討される可能性もありそうです。

 ギリシャの総選挙と並んで懸念されていたスペインの金融システム不安に対して、対応策が打ち出されたことで、市場はやや落ち着きを取り戻しそうです。ユーロ・ドルは、スペインの銀行支援への合意で目先は堅調な動きが見込まれます。ただ、その動きはこれまでに膨らんだ売り玉の買い戻しの色合いが強く、買い戻しが一巡すると、17日のギリシャの総選挙が終わるまで模様眺め気分の強い展開となりそうです。

【夏場にかけてドル・円は上昇か(円安年の季節性)】
 ドル・円は3月中旬以降、円高トレンドが続いてきて、一時1ドル=77円台まで下落しました。ギリシャのユーロ圏離脱懸念やスペインの金融システム不安などを背景にリスク回避の動きから、円は買われやすくなり、円高が続いてきました。欧州や米国の当局による追加金融緩和への期待感から円高傾向も一服しています。

 ここでは、過去に円高で終わった年、円安で終わった年のパターンを確認して、今後の動向きの予測に活用してみましょう 2001〜2011年の11年間で、1年を通して円安で終わった年は、2001年、2005年、2006年、2009年の4回、円高で終わったのは2002〜2004年、2007〜2008年、2010〜2011年の7回あります。

 グラフは過去の値動きを指数化したもので、2001〜2011年の平均が青、上記の円安の年だけを平均したものが赤、円高の年だけを平均したものが茶色となっています。いずれも0〜100の指数で表示しています。なお、2012年(緑)は実際の価格となり、これだけ右軸で表示しています。グラフによると、今年(緑)は円安年(赤)の動きとほぼ同じようなパターンを描いています。

 円安年の赤いグラフのパターンを踏襲するとなると、これまで続いてきた円高傾向も一服して、夏場にかけて円安に振れることとなりそうです。リスク回避の動きを背景に続いてきた円高もいったん収束して7月にかけて、ドル・円は1ドル=83〜84円前後まで上昇することが見込まれます。



2012年6月11日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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