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外為マーケットコラム

EU首脳会議では債務危機克服へ向けて前進

【ESMによる銀行への直接の資本注入に道を開く】
 前週は、28〜29日に開催された欧州連合(EU)首脳会議が市場の注目を集めていました。事前の予想では、債務危機を克服するための具体策には乏しいとの見方が広がり、ユーロ・ドルは一時1ユーロ=1.24ドル台前半まで下落していました。事前の報道では、ドイツのメルケル首相はユーロ共同債の導入には強硬に反対、新たな財政規律で合意する前にユーロ共同債の導入を求めるのは本末転倒だと批判していました。さらに、メルケル首相は「私が生きている限り、欧州で債務を共有することはない」とまで述べていました。

 日本時間の29日の午前中にはEU首脳が1,200億ユーロの成長支援策で合意したものの、イタリアとスペインは短期的な対応策を求めて署名を拒否していると報じられて、「危機対策への具体的な解決策に乏しい」との見方から、ユーロ・ドルは上値重く推移することとなりました。

 ところが、その後、期待薄と見られていた債務危機対策が打ち出されました。29日の正午前、EUのファンロンパイ大統領が明らかにしたところでは、ユーロ圏の銀行の監督制度を統一することで合意。その制度には欧州中央銀行(ECB)が関与して、欧州金融安定メカニズム(ESM)が直接銀行へ資本注入することが可能になるというものです。

 ESMが各国政府を経由せずに銀行に直接資本注入できるため、各国の財政負担を増やさずに金融支援に動くことができます。また、ユーロ圏首脳はスペインの銀行への融資では、ESMの融資返済の優先権を放棄したことを明らかにしました。危機封じ込めのためにドイツが譲歩したようです。さらに救済基金による南欧国債の購入を認める決定を下しました。

 EU首脳会議への期待が後退していただけに、この合意はポジティブ・サプライズとなり、ユーロが急伸しました。リスクオンの状態となり、ユーロだけでなく、ポンドや豪ドルも上昇、クロス円も大幅高となりました。市場のセンチメントが好転したことで、ユーロ・ドルは1ユーロ=1.26ドル台を固めて、1ユーロ=1.27〜1.28ドル前後まで上昇しそうです。ユーロ・円も1ユーロ=101円台を固めれば、102〜103円台まで上昇することが見込まれます。

【EU首脳会議を好感もドル・円は比較的小動き】
 ドル・円は6月25日に大きく円高に振れ、1ドル=80円を割り込んだ後は、79円台で一進一退の動きとなりました。リスクオンではドル売りと円売り、リスクオフでは円買いとドル買いが同時に起きるため、ドル・円は急激に一方向へ動きにくく、米国の長期金利の動向などに左右されやすくなっていました。良好な米経済指標が続くと、米長期金利の上昇につながり、ドル・円は上昇しやすくなりますが、逆に経済指標がさえないと米長期金利が低下して、ドル・円には圧迫要因となります。

 そうした中、29日正午前に欧州債務危機封じ込めのためのEU大統領のコメントが報じられると、ユーロ・ドルやポンド・ドルが急伸、クロス円も全般に大幅高となりました。ただ、ドル・円だけは動きは鈍く、目立った動きを見せず、ようやく79円台後半まで上昇したのは、29日のロンドン時間に入ってからでした。

 ドル・円は引き続き上下に大きく動きにくい展開が見込まれます。リスク志向の高まりで、1ドル=79円割れまでは下落しにくくなったものの、80円接近では上値の重い状況です。1ドル=80円に乗せても、80円台後半で輸出筋の売りなどに押されて、上値を伸ばしにくい展開となりそうです。このため、目先は1ドル=79〜80円台で一進一退の動きを続けることが見込まれます。

 今後の主な経済指標としては、2日にユーロ圏5月雇用統計、米6月ISM製造業景況指数、3日にオーストラリア準備銀行(RBA)政策金利、ユーロ圏5月生産者物価指数、4日に豪5月小売売上高、ユーロ圏5月小売売上高指数、5日に豪5月貿易収支、英中銀(BOE)政策金利、欧州中央銀行(ECB)政策金利、米6月ADP雇用統計、米新規失業保険申請件数、米6月ISM非製造業景況指数、6日に日本5月景気動向指数、独5月鉱工業生産指数、米6月雇用統計などがあります。

 米ISM製造業景況指数や米雇用統計で米国の景気動向や雇用情勢がどう変化しているかがポイントとなりそうです。また、ECBが債務危機やユーロ圏の景気悪化に対処するため、政策金利の引き下げに動くかも注目されます。

【スペインの利回りが急低下】
 ギリシャの再選挙では緊縮派が勝利して、ギリシャのユーロ圏離脱懸念は後退したものの、ギリシャやスペインの財政問題が解決したわけではありません。スペインの国債利回りはピークから下げているとはいえ、高水準で推移しています。スペインの利回り上昇が波及してイタリアの利回りも高水準で推移しています。

 スペインの国債利回りは、同国の財政問題や金融システム不安を背景に上昇していました。10年債利回りは、自力での資金調達が困難となる「危険水域」の7%超まで一時上昇しました。スペインの利回り上昇に追随して、イタリアの10年債利回りも6%超まで上昇していました。

 EU首脳会議での債務危機克服への合意を受けて、29日には両国の利回りが急低下しました。10年債利回りは、スペインが6.3%台、イタリアは5.8%台まで低下しています。グラフはユーロ圏の主要4カ国のドイツ、フランス、イタリア、スペインの4カ国の10年債利回りの推移です。

 ドイツやフランスが低位安定する中、債務問題の深刻化などを背景にスペインとイタリアの利回りは上昇を続けていました。EU首脳会議を受けて、両国の利回りは急低下していることがグラフの右端から見て取れます。今後、スペインの金融システム・財政面への懸念がさらに後退すれば、利回りは一段と低下することとなりそうです。



2012年7月2日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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