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外為マーケットコラム

日銀の対策は中途半端で、円安トレンドにつながらず

【欧州債務懸念は根強い】
 11日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、経済状況がさらに悪化しない限り、量的緩和第3弾(QE3)の実施は困難との判断が示され、早期の追加緩和実施への期待感が後退しました。米国の企業業績がさえないこともあり、米国株をはじめとして主要国の株価は上値の重い動きとなり、リスク回避の動きが強まっています。

 9〜10日に実施されたユーロ圏財務相会合では、スペインに求めている財政赤字削減の目標達成期限を2014年まで1年延長することで合意しました。また、スペインの銀行支援に関する覚書は7月20日ころ調印する見通しを明らかにしています。欧州金融安定メカニズム(ESM)による政府保証なしでのスペインの銀行への直接の資本注入は、欧州の銀行監督当局が設立された後になる見通しです。欧州の救済基金による南欧国債の買い入れについては、進展はありませんでした。

 6月の欧州連合(EU)首脳会議での合意事項を目立って進展させるような内容ではなかった上、欧州、米国ともに経済指標が悪化していることから、ユーロは上値の重い展開を強いられています。欧州債務危機への懸念は払拭されておらず、安全資産として米国債が買われる状況が続いており、米10年債利回りは、12日に1.5%を割り込むなど、低水準で推移しています。

 スペインの10年物国債の利回りは、危険水域とされる7%から低下しているものの、6%台後半で高止まりしています。さらに格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスはイタリアの国債の格付けを2段階引き下げるなど、欧州債務危機への懸念が根強いままです。ユーロの圧迫要因が多いものの、16日の6月の米小売売上高が予想に反して減少するなど、米国経済の先行き不透明感も強まっています。米国での追加金融緩和への期待も根強く、一方的なユーロ売りの動きとはなりにくく、ユーロ・ドルは1ユーロ=1.20〜1.24ドル前後でのレンジで推移しそうです。

【日銀は短期国債の買い入れ枠を拡大したが、対策は中途半端】
 11〜12日に日銀の金融政策決定会合が開催され、政策金利は全員一致で据え置きとなりました。固定金利オペを5兆円減額する一方で、短期国債の買い入れ枠を5兆円増額しました。短期国債やCPの買い入れにおける下限金利を撤廃。固定金利オペは3カ月物と6ヶ月物の区別をなくして、6カ月以下とします。資産買い入れ基金の規模は70兆円に据え置かれて、「真水」の増加分はなく、追加緩和は見送りということとなりました。

 短期国債の買い入れ枠の拡大を好感して、発表直後は円売りの動きとなり、ドル・円は1ドル=80円に接近したものの、すぐに発表前の水準付近の79円台半ばまで下落してしまいました。短期国債の買い入れ枠の拡大を好意的に見る向きもありますが、日銀の対策は市場に催促されて致し方なく、対応策を小出しにしているという印象が拭えません。欧州中央銀行(ECB)に加えて、中国、韓国の利下げ、英国の量的緩和など、各国での金融緩和策が相次いでおり、日銀も「本音としては何もしたくなかったが、何かせざるを得なかった」というのが正直なところでしょう。

 今回も「日銀は金融緩和を強力に推進している」との声明を出したものの、「強力」というのは口先だけで、規模も中途半端です。固定金利オペを削減しての、国債買い入れ枠拡大で、基金の規模全体では変化もありません。日銀が本気度を示すなら、「買い入れ基金の規模を20兆円一気に増額」「必要ならさらに拡大も辞さない」くらいの姿勢を示すべきでしょう。市場から見て、サプライズと言えるくらいの規模であれば、アナウンスメント効果も大きく、今回のように円売りが20〜30分で終息するようなことにはならなかったでしょう。

 ドル・円は、16日の米小売売上高がさえない結果となり、米国での追加金融緩和観測が台頭してドルが売られて、1ドル=79円割れまで下落しています。引き続き1ドル=78〜80円台での狭いレンジでの推移が見込まれます。日銀が追加緩和に積極的な姿勢を示さなかったことで、円安トレンドにつながるきっかけとならなかったことは残念です。

 今後の主な経済指標としては、17日に独7月ZEW景況感指数、米6月消費者物価指数、カナダ銀行(BOC)政策金利、米6月鉱工業生産、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、18日に英金融政策委員会(MPC)議事録、英6月雇用統計、米6月住宅着工件数・建設許可件数、19日に日本5月景気動向指数、米新規失業保険申請件数、米7月フィラデルフィア連銀景況指数、米6月中古住宅販売件数、20日に独6月生産者物価指数などがあります。

【安全資産として日米独英の国債が買われる状況続く】
 欧州債務危機や世界的な景気減速への懸念から、安全資産として主要国の国債が買われています(国債価格上昇=利回りは低下)。金融市場では、リスク回避モードとなったときに安全資産として最も資金が向かいやすいのが国債で、その中でも米国債に買いが集まりやすくなっています。昨年8月に格付け会社スタンダード&プアーズが米国債を格下げした際には、株式やコモディティなどは売られたものの、結局買われたのは米国債という皮肉な結果となりました。

 グラフは、日本、米国、ドイツ、英国の10年債の利回りをグラフにしたものです。日本国債の利回りが一段低いですが、他の3カ国の利回りはおおむね同一歩調で推移しています。各国の利回りはいずれも過去最低水準近くまで低下しています。

 欧州連合(EU)首脳会合で欧州債務危機の克服へ向けて、欧州金融安定メカニズム(ESM)による銀行への直接資本注入などが合意されました。ただ、具体的な対応策はなかなか進展しない上、欧州、米国や中国などで景気減速への懸念が広がりつつあります。こうした点から多くの国の株価が調整するなど、資金は主要国の国債へ向かいやすくなっています。

 ユーロ建てで取引されるドイツ国債の利回りは、一時は1.2%を割り込む水準まで低下したものの、その後1.5%台まで上昇した後に再び低下しています。ただ、米国と違い過去最低水準を更新するには至っていません。これはユーロ圏全体への懸念から、ユーロ圏から他国へ資金をシフトしようという動きとみられます。こうした動きが続くと、ドイツ国債は英国債や米国債と比べて、利回りが下がりにくくなる可能性が出てきそうです。



2012年7月17日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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