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外為マーケットコラム

欧州債務問題への具体策は先送り、ユーロの戻りは一時的か

【ECB理事会では債務問題への具体策に乏しい】
 7月26日に欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が「ユーロを守るためにECBはあらゆる手段を講じる用意がある」と述べて以降、ユーロ圏各国の首脳が会談を行い、同様の内容のメッセージが市場に伝えられました。そうしたアナウンスメント効果により、ユーロ・ドルは1ユーロ=1.22〜1.23ドル台での落ち着いた動きが続きました。

 2日のECB理事会後の記者会見で具体的な対応策が打ち出されるとの期待が高まりましたが、ドラギ総裁はイタリア、スペイン国債の購入する方針を示したものの、具体的な規模や時期には示しませんでした。さらにユーロ圏の政府がまず救済基金を利用することを前提とするなど、ECBの国債買い入れに条件を付ける考えを表明しました。

 この記者会見では、一段の踏み込んだ対応策を期待する向きが多かったこともあり、ユーロ・ドルは失望売りから急落。欧州や米国の株かも下落するなど、リスク回避の動きが強まりました。スペインの10年物国債の利回りは、それまで7%を割り込んで落ち着きを見せていたものの、一気に「危険水域」の7%超まで上昇しました。

 3日に発表された7月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数が前月比16.3万人増となり、大方の事前予想の10万人増を大きく上回りました。非農業部門雇用者数は過去数カ月、事前予想を下回る状況が続いて、米国の景気の先行き懸念につながっていましたが、今回はポジティブ・サプライズとなり、市場のセンチメントが一気に好転して、リスク志向が高まっています。この結果、ユーロ・ドルは1ユーロ=1.24ドル台まで急伸しました。スペインの10年物国債の利回りも、再び7%を割り込んでいます。

 ただ、欧州債務問題への対応策が具体化するには時間がかかりそうなことで、この問題が蒸し返されると、ユーロ・ドルは上値の重い展開となり、1ユーロ=1.20ドルへ向けて下落する展開が見込まれます。

 欧州金融安定メカニズム(ESM)の設立は9月にずれ込む見通しで、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)による国債購入などが実現しないようだと、9月の理事会の前に債務危機は一段と深刻になる可能性が高まりそうです。また、ドイツが南欧諸国の国債買い入れに反対姿勢を示していると伝えられているもの気がかりです。

【FOMCでは追加緩和見送り、次回に注目】
 7月31日〜8月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、追加緩和は見送られました。これまで、異例の低金利を2014年終盤まで据え置くとしており、この期限が延長されるとの観測も一部にはありましたが、それも見送られています。

 米連邦準備理事会(FRB)は景気判断を下方修正しており、今後の緩和措置に含みを残す結果となりました。2年前の2010年8月のワイオミング州ジャクソンホールの講演で、バーナンキ議長が量的緩和第2弾(QE2)を示唆しており、今年も8月末のジャクソンホールでの講演が注目されています。そこで追加緩和を示唆、9月12〜13日に実施される次回のFOMCで量的緩和第3弾(QE3)が打ち出されるとの観測も出ています。

 今後の主な経済指標としては、6日に日本6月景気動向指数、7日にオーストラリア準備銀行(RBA)政策金利、英6月鉱工業生産指数、独6月製造業受注指数、8日に日本6月経常収支、豪6月住宅ローン許可件数、独6月経常収支・独6月貿易収支、独6月鉱工業生産指数、9日に日本6月機械受注高、豪7月雇用統計、中国7月消費者物価指数・中国7月生産者物価指数、日銀金融政策決定会合・政策金利、中国7月鉱工業生産指数・中国7月小売売上高、英6月貿易収支、米6月貿易収支、米新規失業保険申請件数、10日に中国7月貿易収支、日本6月鉱工業生産指数、独7月消費者物価指数、英7月生産者物価指数などがあります。

 鉱工業関連や物価指数関連の指標が多く発表されます。日銀の金融政策決定会合では、政策金利は据え置きの可能性が高いとみられます。米国では今回は緩和見送りとなりましたが、将来的に緩和余地を残し、ユーロ圏や英国でも緩和姿勢が前向きなこともあり、日銀が緩和姿勢の強化を打ち出すことが期待されますが、今回は金融政策に変更はなさそうです。

 3日の米雇用時計を受けて、ドル・円は1ドル=78円台後半まで上昇したものの、もみ合いのレンジを抜けるには至っていません。今回の米雇用統計は良好だったものの、米国の経済指標は低調なものが多いことから、米長期金利は低下圧力がかかりやすく、その場合は円買いにつながりやすく、ドル・円は上値の重い展開を強いられそうです。1ドル=77〜79円台でのレンジ相場が見込まれますが、日本の金融当局による介入警戒感もあり、1ドル=77円台まで下げても長続きしないでしょう。

【ドル・円やクロス円は8月は円高に振れやすい季節】
 例年、8月はドル・円、クロス円ともに円高に振れやすいという傾向があります。グラフは2002〜2011年の10年間について、主要通貨や商品などが8月の月足が陽線になった比率を示しています。陽線とは終値が始値よりも上昇したことを意味しています。ここで、ドル・円やクロス円が陽線になりにくい(すなわち下落しやすい)ということは、円高に振れやすいということを示しています。

 なお、グラフの棒グラフは8月の陽線確率(左軸)、ピンクの折れ線は通貨の値幅(pips)を示しています(右軸)。これによると、8月の陽線確率はドル・円が30.0%、豪ドル・円、ポンド・円、ユーロ・円はいずれも20.0%となり、どの通貨も円高に振れやすくなっています。ユーロ・ドル60.0%と目立ったバイアス(偏り)はないものの、豪ドル・ドルは30.0%、ポンド・ドルは20.0%とドル高に傾きやすいと言えます。総じて言えるのは、円とドルが買われやすいものの、円の方がより買われやすいということです。なお、通貨以外では、ドル建て金が70.0%と買われやすいものの、NY原油(WTI原油)が40.0%、NYダウが60.0%と目立った偏りはありません。

 なお、過去10年間の各通貨の8月の平均値幅は次の通りです。通貨間で標準化するためpipsで表示しています(カッコ内は6月の値幅)。ドル・円は445(458)、豪ドル・円は642(543)、豪ドル・ドルは515(460)、ポンド・円は1132(895)、ポンド・ドルは744(691)、ユーロ・円は774(622)、ユーロ・ドルは513(520)となっています。

 ドル・円やポンド・円はそれぞれ4.45円、11.32円の値幅ということになります。豪ドル・ドルは0.0515ドル、ユーロ・ドルは0.0513ドルとなります。ドル・円とユーロ・ドル以外は8月の方が7月よりも月間の値動きが大きくなる傾向があります。



2012年8月6日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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