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外為マーケットコラム

日銀はゼロ回答、ドル・円はレンジ相場が継続か

【ECBへの期待感は根強いが】
 2日の欧州中央銀行(ECB)理事会後のドラギ総裁の記者会見で、踏み込んだ債務危機への対策が打ち出されなかったことに対する失望感からユーロが売られました。ところが3日に発表された米雇用統計が予想よりも良好で、ポジティブ・サプライズとなり、リスク志向が高まることとなりました。

 その後は、ECBへの南欧国債の買い入れへの期待感や米国の追加緩和期待から、ユーロ・ドルは大きな崩れはありません。各国の株価も堅調に推移しており、米国株は3カ月ぶりの高値圏にあります。

 今後は、欧州各国やECBが債務危機の克服へ向けて、どのような具体策を打ち出すかが注目されます。ECBへの期待は根強いが、ドラギ総裁はECBが南欧国債を購入するには、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)への国債購入要請が前提となるとの方針を示しています。このため、具体的な対応策が出てくるまでには紆余曲折がありそうです。

 スペインの10年物国債の利回りは7%を下回る6.8%近辺で推移しています。債務危機への対応策が打ち出されてこなければ、再び7%台に乗せることとなりそうです。そうなると、落ち着きを見せているユーロ・ドルの相場も下げに転じる可能性が高まりそうです。逆に債務危機への具体策が打ち出されてくれば、ユーロ・ドルは上昇に向かう可能性が高まります。

【日銀の金融政策決定会合はゼロ回答】
 8月8〜9日にかけて行われた日銀の金融政策決定会合では、政策金利は予想通り据え置きとなり、資産などの買い入れ枠も据え置きとなりました。おおむね予想された通りであったものの、「ゼロ回答」となっています。景気判断については「緩やかに持ち直しつつある」との判断を据え置きましたが、輸出と生産の判断を下方修正しました。日銀はこれまでと同様に「強力な金融緩和を推進している」と強調しているものの、新たな対策を打ち出したわけでもないことから、市場に目立ったインパクトはみられませんでした。

 7月31日〜8月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、追加緩和は見送られたものの、米連邦準備理事会(FRB)に対する追加金融緩和期待は根強いものがあります。米国の経済指標の悪化が続いて、追加緩和への期待は高まるようだと、米国の長期金利は低下圧力がかかり、ドル・円も上値を抑えられる可能性が高まります。FRBは前回のFOMCで、今後の緩和措置に含みを残す結果となっており、今後の景気動向次第では、9月12〜13日に実施される次回のFOMCで量的緩和第3弾(QE3)が打ち出されるとの観測も出ています。

 今後の主な経済指標としては14日に独第2四半期国内総生産(GDP)・速報値、ユーロ圏第2四半期域内総生産(GDP)・速報値、ユーロ圏6月鉱工業生産指数、独8月ZEW景況感指数、米7月生産者物価指数、米7月小売売上高、15日に英金融政策委員会(MPC)議事録、英7月雇用統計、米7月消費者物価指数、米7月鉱工業生産・設備稼働率、16日にユーロ圏7月消費者物価指数、米新規失業保険申請件数、米7月住宅着工件数・建設許可件数、17日に独7月生産者物価指数、ユーロ圏6月貿易収支、米7月景気先行指数などがある。各国からはGDPや物価指数などの統計が発表されます。

 ドル・円は米国の経済指標が改善を示し、米長期金利が一段と上昇するようなら円安に振れそうです。逆に景気の先行きに不安材料が広がれば、米長期金利は低下して、円高に傾きそうです。ただ、ドル・円はあまり目立った動きは期待できず、目先は1ドル=77〜79円台でのレンジ相場が見込まれます。1ドル=79円接近では輸出筋などによるドル売りに押されて、上値を抑えられそうです。

【米雇用関連統計でみるとNYダウは堅調な動きか】
 NYダウは米連邦準備理事会(FRB)による追加緩和期待が根強く、堅調な動きを見せており、1万3,000ドルを突破して、およそ3カ月ぶりの高値圏まで上昇してきました。欧州債務危機への警戒感や企業業績への懸念などから、6月はじめに1万2,000ドル近くまで下落した後、再び上昇に転じています。

 ここでは、過去に何度かご説明したように、米新規失業保険申請件数を用いて、NYダウの今後を予測してみたいと思います。グラフは、米新規失業保険申請件数とNYダウを表示しています。ピンクが米新規失業保険申請件数の4週平均(左軸)で上下を逆に表示してあり、青がNYダウを示しています(右軸)。ピンクのグラフの上昇(数値は減少)は雇用情勢の改善を意味しています。このグラフからは両者が似たような動きをすることが見て取れます。

 米新規失業保険申請件数は、毎週木曜日に発表される週次のデータであり、速報性が高いことで米国の雇用情勢を把握するのに適したデータです。ただ、この統計は速報性が高いものの、ほぼ毎回のように修正されるという特徴があります。こうしたブレの大きい統計であるため、グラフでは4週平均を採用しています。

 春先に米新規失業保険申請件数の4週平均の減少傾向が一服すると(ピンクのグラフは下向きや横ばい)、NYダウも上げ一服となり、しばらく調整が続きました。その後、4週平均が再び減少(グラフは上向き)に転じると、NYダウも上昇に転じています。現在の傾向が続くようなら、NYダウも堅調な推移が続きそうです。



2012年8月13日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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