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外為マーケットコラム

ECBへの期待感膨らむが、期待しすぎは禁物か

【ECBへの期待感が膨らむ】
 19日の独シュピーゲル誌は、欧州中央銀行(ECB)は各国の国債のドイツ国債に対するプレミアムが一定の水準を超えた場合、債務危機に陥った国の国債を買い入れると報じました。ECB報道官がこの報道を否定したものの、ECBが南欧国債買い入れに動くとの期待は根強く残りました。21日には、英デーリー・テレグラフ紙が独シュピーゲル誌の記事の内容を確認することができると報じたことで、ECBへの期待感が再び高まりました。

 市場では9月6日のECB理事会で、南欧国債買い入れに関して具体策を公表するとの見方が広がっています。前回(8月2日)のECB理事会後の記者会見で、ドラギ総裁は債務危機を抑制するために「追加の非標準的措置を検討する。今後数週間で、そうした措置に関する適切な手順を策定する」とも述べており、今後の具体策の表明を示唆しました。このため、9月の理事会で債務危機への対応策が発表されるとの期待感が広がっています。

 ECBへの期待感から、ユーロ・ドルは堅調に推移しています。ただ、あまり過剰な期待は、実際の発表内容が期待に満たないと失望売りにつながる恐れがあります。ドイツは以前からECBによる南欧国債の買い入れには批判的で、独連銀の月報では、「ユーロ圏の国債買い入れには批判的で、安定性に関する大きなリスクとなる」との見解を表明しています。ドイツの反対を押し切って、南欧国債の買い入れを推し進められるかが注目されます。

 6日のECB理事会に次いで、9月12日にはドイツの憲法裁判所が欧州金融安定メカニズム(ESM)や財政協定を合憲とみなすかどうかの判断を下す見込みです。9月14〜15日には欧州連合(EU)財務相会合も開催され、債務危機への対応が具体的に進展するかが注目されます。

 ユーロ・ドルはECBによる債務危機対応への期待感などを背景に堅調な推移が見込まれます。ユーロ・ドルは投機筋による売り越しは依然として大きく、買い戻しの動きが続くと1ユーロ=1.26〜1.27ドル前後までの上昇がありそうです。ただ、ECBの対応が期待外れだったり、ギリシャの財政問題が再び火種として意識されるようなことになれば、好転していたセンチメントが一気に悪化して、1ユーロ=1.21〜1.22ドルへ向けて下落する可能性も出てきます。

【米長期金利の上昇一服で、ドル・円の上昇足踏みか】
 欧州債務危機への懸念後退や一部の米経済指標が良好だったことで、米10年物国債利回りは一時1.8%台まで上昇しました。米長期金利の上昇による日米の利回り格差の拡大がドル買い/円売りにつながり、ドル・円は一時1ドル=79円台後半まで上昇しました。

 ただ、22日に発表された7月31日〜8月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、経済が好転しない限り、かなり早期に追加緩和に踏み切る公算が高いとの見解を示しました。これを受けて、米長期金利は低下してドル売りの動きとなり、ドル・円は上値を抑えられています。

 このFOMCは最近の堅調な経済指標は反映されておらず、「早期に追加緩和」を文字通りに受け取ることはできません。ただ、米国では失業率は依然として高水準であり、「FRBはいずれ追加緩和に動く」との期待は根強くあります。なお、セントルイス地区連銀のブラード総裁は23日に「一部の経済指標は改善しており、議事録はやや古い」と、早期の追加緩和の可能性を否定するなど、FOMCメンバーの間でも意見対立がみられます。

 こうした中、8月31日にワイオミング州ジャクソンホールで行われるバーナンキFRB議長の講演に注目されています。バーナンキ議長が下院委員会の議長に出した書簡で、でこれまでの金融緩和策の効果を強調して、追加緩和措置をとる余地があるとの姿勢を示したと報じられており、9月12〜13日に実施される次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和第3弾(QE3)が打ち出されるとの期待が高まっています。

 今後の主な経済指標としては27日に独8月ifo景況感指数、28日に米6月S&Pケースシラー住宅価格指数、米8月消費者信頼感指数、29日に独8月消費者物価指数・速報値、米第2四半期国内総生産(GDP)・改定値、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、30日に豪7月住宅建設許可件数、独8月雇用統計、米新規失業保険申請件数、米7月個人所得・個人支出、31日に日本7月雇用統計・日本7月鉱工業生産指数、ユーロ圏8月消費者物価指数・速報値、ユーロ圏7月雇用統計、米8月シカゴ購買部協会景気指数、米8月ミシガン大学消費者信頼感指数などの統計が発表されます。

 米長期金利の上昇や日米の金利差拡大からドル・円は一時1ドル=79円台後半まで上昇しました。ただ、米長期金利の上昇一服、FOMC議事録を受けてのドル売りなどから、ドル・円は上値を抑えられています。上昇局面で1ドル=80円を回復できなかったこともあり、1ドル=78〜79円台でのレンジ相場が続くこととなりそうです。

【ユーロ・ドルの売り玉は減少傾向】
 米商品先物取引委員会(CFTC)は毎週金曜日にその週の火曜日時点での建玉明細を発表しています。この中で、大口投機家の売り越し幅、買い越し幅の変動は、相場の方向と連動性が高いケースが多く、特に注目されています。

 グラフはユーロ・ドルの大口投機玉の建玉明細のグラフで、水色はユーロ・ドルの終値(これのみ左軸)、緑の棒グラフは買い玉、ピンクは売り玉です。赤は買い玉から売り玉を差し引いたネットポジションで、最も注目される数値となっています。赤のグラフがゼロより下にあるときは大口投機玉は売り越し、赤がゼロより上なら買い越しとなります。

 グラフによると、ユーロ・ドルの大口投機玉は依然として大幅な売り越しではあるものの、売り越し枚数は6月5日の21万4,418枚をピークに減少傾向にあり、8月21日時点では12万3,932枚まで減っています。欧州債務懸念が収まったわけではありませんが、欧州中央銀行(ECB)などによる債務危機対応への期待感などから買い戻しの動きが進んだようです。

 買い玉はほとんど増えていませんが、売り玉が買い戻されて減少している分、売り越し枚数は減っています。ユーロ・ドルはセンチメントがさらに好転すると、一段と上昇する可能性があります。逆に債務懸念が再燃すれば、再び売り越しが膨らんで下落することとなりそうです。



2012年8月27日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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