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外為マーケットコラム

日銀の追加緩和はあるか、その動向に注目

【ドイツ憲法裁判所はESMを合憲と判断】
 12日にドイツ憲法裁判所は欧州安定メカニズム(ESM)を合憲との判断を下しました。ただ、ESMに資金を追加で拠出する場合は議会の承認を必要とするとの条件をつけています。合憲の判断を受けて、ESMは10月に発足する見通しとなりました。

 6日の欧州中央銀行(ECB)理事会後の記者会見で、ドラギ総裁が南欧諸国の国債買い入れを表明したことで、欧州債務懸念は後退に向かいました。10年物国債利回りは、スペインが6%割れ、イタリアが5.1%前後まで低下しています。13日に実施されたイタリアの3年物国債入札では、落札利回りは2.75%となり、前回(7月中旬)の4.65%と比べて急低下しました。過度な悲観論が後退したことによるものです。

 なお、欧州連合(EU)の欧州委員会は、債務危機対策の柱となる銀行監督の一元化案を発表しました。これによると、各国の監督当局がそれぞれ担ってきた監督機能を一元化して、ユーロ圏にある約6000の銀行をECBに監督させることになります。ユーロ圏の金融安定につなげるのが狙いとなります。銀行監督の一元化は、ESMが各国政府を経由せず域内の銀行に直接資本を注入するための前提条件となっています。年内に正式に決定して、2013年1月から既に公的資金の注入を受けている銀行の監督を開始する方針としています。

 ユーロ・ドルは、債務危機への懸念後退、ESMの合憲判断、米連邦公開市場委員会(FOMC)での量的緩和第3弾(QE3)の実施によるドル売りから、1ユーロ=1.31ドル台まで上昇しました。今後は、スペインが支援要請に動くかどうか、ギリシャに対して第3次支援が必要になるのかといったことが注目されそうです。悪材料を問題なく消化できれば、一段高の可能性が高まります。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細では、大口投機玉の売り越しは9月11日時点で93,658枚となっています。売り越しのピークだった6月5日の214,418枚と比較すると半減しているものの、売り越し枚数は依然として高水準であり、買い戻しの余地は残されており、まだ上昇する可能性が高いとみられます。目先は、1ユーロ=1.32〜1.33ドルへ向けて上昇しそうです。

【FOMCではQE3実施を決定】
 12〜13日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利は据え置きとなったものの、住宅ローン担保証券(MBS)の購入によるQE3の実施を決めました。FOMCの声明では、MBSを毎月400億ドル買い入れます。インフレが抑制されている限り、労働市場の見通しが十分に改善するまで資産買い入れを継続する方針です。事実上、無制限で緩和措置を続ける姿勢を表明しました。また、必要に応じて他の政策手段を講じる方針を示しました。

 これまで異例の低金利を維持する時間軸を「2014年終盤まで」としていましたが、「2015年半ばまで」に延長しています。なお、従来の「オペレーション・ツイスト」は今年末まで続ける方針示しています。米連邦準備理事会(FRB)が「景気が回復して、労働市場が改善するまで、できることは何でもやる」という姿勢を示したと言えそうです。

 MBSの買い入れは、住宅ローン金利が一段と低下することが見込まれ、改善を見せつつある住宅市場をさらに活性化させることにつながりそうです。なお、今回は米国債の買い入れでなく、MBSの買い入れとなったため、米国債の価格上昇(金利の低下)は一服する可能性が出てきました。ドル・円は米国の金利動向に左右されやすく、米国債の利回り低下があまり進まないとなれば、円高懸念も一服することとなりそうです。

 QE3の実施決定を受けて、米国株は大幅高、ドルは対主要通貨で下落しました。ドル・円は、一時1ドル=77円台前半まで下落しました。米国債の一段の利回り低下の可能性は残るものの、リスク志向の高まりで国債利回りの低下が一服するようなら、ドル・円は1ドル=77円を割り込むようなことにはならないでしょう。また、日本の金融当局による介入警戒感もドル・円の下値を支えそうです。市場では、18〜19日の日銀金融政策決定会合で追加緩和に動くとの思惑もあり、ドル・円は安値からは戻しています。ただ、ドルの上値が重そうなことから、ドル・円は1ドル=77〜79円前後での推移が続きそうです。

 今後の主な経済指標としては、18日に独9月ZEW景況感指数、19日に日銀金融政策決定会合・政策金利、日本7月景気動向指数、英金融政策委員会(MPC)議事録、米8月住宅着工件数・建設許可件数、米8月中古住宅販売件数、20日に日本8月貿易収支、米新規失業保険申請件数、米9月フィラデルフィア連銀景況指数、米8月景気先行指数などの統計が発表されます。

【ドル・円は今年円高で終わるのか、円安で終わるのか】
 これまでに何度か、過去の相場データの季節的なパターンから、将来の方向性を探ろうと試みました。ここでは、過去に円高で終わった年、円安で終わった年のパターンを確認して、今後の動向きの予測に活用してみます。2001〜2011年の11年間で、1年を通して円安で終わった年は、2001年、2005年、2006年、2009年の4回、円高で終わったのは2002〜2004年、2007〜2008年、2010〜2011年の7回あります。

 グラフは過去の値動きを指数化したもので、2001〜2011年の平均が青、上記の円安の年だけを平均したものが赤、円高の年だけを平均したものが茶色となっています。いずれも0〜100の指数で表示しています。なお、2012年(緑)は実際の価格となり、これだけ右軸で表示しています。

 今年の値動き(緑)は、6月末くらいまで円安年の動きを示す赤のグラフと似たような動きを示していました。ただ、7月〜8月の値動きは円安年の動きとはやや異なる動きとなりました。茶色の円高年や青の過去11年平均とも異なる動きでした。9月に入ると、もみ合いとなっています。

 そして9月の下旬は、今年が円高で終わるのか、円安で終わるのかの重要な分岐点となります。9月以降、円安年の赤のグラフは上昇、円高年の茶色のグラフは下落に転じるなど、正反対の動きです。これまでは、米国の追加緩和期待でドル・円は上値を抑えられていましたが、円高圧力も一服しそうです。そうなると、今後は円安年のパターンに近い動きとなるかもしれません。いずれにせよ、9月終盤の値動きに注目したいところです。



2012年9月18日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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