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外為マーケットコラム

日銀の追加緩和期待で、ドル・円は底堅い推移か

【ユーロ圏の銀行監督一元化で前進】
 17日に格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスはスペインの格付けを「Baa3」に据え置きました。これで投資適格級の格付けが維持されたことになります。スペインの格付け据え置きを受けて、欧州債務問題への懸念が後退して、ユーロは1ユーロ=1.31ドル台半ばまで上昇しました。なお、10日に格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)がスペインの格付けを投資適格等級では最低のランクとなる「BBBマイナス」に引き下げており、ムーディーズの動向が注目されていました。

 スペインからユーロ圏への支援申請はまだないですが、おそらく数週間以内に申請があるものとみられます。11月中旬のユーロ圏財務相会合で支援を申請するとの見方も出ています。支援申請があれば、早期に欧州中央銀行(ECB)や欧州安定メカニズム(ESM)が行動に移るとみられ、債務問題への懸念は後退することが見込まれます。

 18日から開催されている欧州連合(EU)首脳会議では、欧州の銀行監督一元化を中心に協議が行われました。協議では、早期にESMによる銀行への資本注入に動きたいフランスと、ESMが資本注入を開始する前にECBによる銀行監督体制を確立したいドイツとの間に主張に隔たりがみられたようです。

 そうした中、ECBがユーロ圏の銀行を一元的に管理することに向けて、年内に法的な枠組みを整備することで合意しました。これで、2013年中に段階的にユーロ圏の約6,000行の銀行がECBの監督下に入る見通しです。

 今回のEU首脳会議では、銀行監督の一元化については前進が見られたものの、ギリシャやスペインに対して、実質的な協議はありませんでした。市場関係者の間ではギリシャについては緊縮財政の期限を2年程度延長して、同国への経済の悪影響を緩和するとみられていただけに、今後への影響が懸念されます。

 欧州債務危機への警戒感が後退しており、スペインの10年物国債の利回りが5.3%台まで低下しています。同国への不透明感が払拭されたわけではないものの、先行きへの悲観的な見方が後退しており、ユーロ・ドルは一時1ユーロ=1.31ドル台まで上昇しました。今後も極端な崩れはないと見られ、1ユーロ=1.29〜1.31ドル台での推移が見込まれます。スペインからの支援申請があれば、一段と上昇する可能性が高そうです。

【日銀は追加緩和に動く可能性】
 日銀は近いうちに追加緩和に動くとの観測が広がりつつあります。2014年度に物価上昇率1%という目標に届かない可能性が高まっており、追加緩和を検討する見通しです。9月に10兆円規模の追加緩和に踏み切ったものの、デフレ脱却への見通しが立たないことから、今月30日に開催される金融政策決定会合で、さらに手段を講じる可能性が高くなっています。追加緩和の手段としては、資産を買い入れる基金の増額に加えて、買い入れる国債の年限の延長などが選択肢になるとみられています。

 最近の米国の経済指標では、15日の9月の米小売売上高、17日の9月の住宅着工件数・建設許可件数、19日の10月の米フィラデルフィア連銀製造業景気指数が予想を上回るなど、堅調な指標も目立ちます。企業業績はまちまちながら、堅調な経済指標を背景に米国の長期金利はじり高で推移、日銀の追加緩和観測も加わり、ドル・円も1ドル=79円台を回復しています。

 目先は日銀の追加緩和期待がドル・円の下値を支える展開となりそうです。良好な米経済指標が続いて米長期金利がさらに上昇、かつ日銀の追加緩和への期待感が一段と高まれば、ドル・円は緩やかに上昇して、1ドル=79円台を固めて80円を試す展開も見込まれます。ただ、6月下旬に80円を割り込んだ後は、80円を回復できておらず、80円が抵抗となる可能性もあります。

 今後の経済指標やイベントとしては、23日にカナダ銀行(BOC)政策金利、24日に豪第3四半期消費者物価指数、独10月ifo景況感指数、米9月新築住宅販売件数、米連邦公開市場委員会(FOMC)、25日にニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利、英第3四半期国内総生産(GDP)・速報値、米9月耐久財受注、米新規失業保険申請件数、26日に日本9月消費者物価指数、米第3四半期国内総生産(GDP)・速報値、米第3四半期個人消費・速報値、米10月ミシガン大学消費者信頼感指数などがあります。

【ユーロ・円と日独の2年物国債の利回りの差】
 前週は、ドル・円と日米の2年物国債の利回りの差、ドル・円と米2年物国債の利回りとの相関を比較しました。わずかですが、米2年物国債の利回りとの方が相関が高いと判明しました(大きな差ではありませんでしたが)。今回は、ユーロ・円について、利回りと通貨の関係を確認します。

 グラフはユーロ・円とドイツと日本の2年物国債の利回りの差を示したものです(ドイツの利回り−日本の利回り)。ピンクがユーロ・円(右軸)、青が利回りの差(左軸)です。グラフの表示期間の両者の相関係数は0.78と高い水準となっています。ユーロ・円とドイツの2年債利回りでは相関係数は0.77となり、大きな差はありません。ただ、ドイツの利回り単独よりも日独の利回りの差の方が相関がやや高めです。どちらを参考にしてもあまり大差はなさそうです。

 なお、ドイツの2年債利回りは欧州債務危機に伴うリスク回避の動きから、一時的なマイナス金利になっていた時期もありました。現時点でも2年債利回りは日本よりも低く、日独の利回りの差はマイナスです。

 今後、債務危機への懸念が後退して、ドイツの2年債利回りが上昇に向かうようだと、ユーロ・円には上昇要因となりそうです。逆にユーロ圏の景気悪化や債務危機が深刻になるようだと、ドイツ国債が買われて(利回りは低下)、ユーロ・円には圧迫要因となりそうです。ユーロ・円もドル・円と同様に国の間の利回りの差に左右されやすい状況が続きそうです。



2012年10月22日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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