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外為マーケットコラム

ドル・円は1ドル=90円を視野に上昇継続か

【日銀の動きに注目】
 今年は、年初はまず政府の動きや株価とともに、日銀の動きに注目が集まりそうです。昨年の総選挙の前から、日銀には政府から強いプレッシャーがかけられており、1月21〜22日に開催される金融政策決定会合で、どのような動きに出るかが注目されます。

 日銀の昨年の動きを見る限り、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)と比べて、積極的に動こうという意志が感じられませんでした。ECBのドラギ総裁は「ユーロを守るためにどんなことでもする」と表明、FRBは失業率の改善を目標に掲げるなど、金融不安の改善、景気回復などへ中央銀行が積極的に動く姿勢を示しました。最近は改善に向かっているようですが、昨年の日銀はアナウンスメント効果を軽視しており、「金融政策には限界がある」といった「できない言い訳」を探すことに終始しているように感じられました。

 政治的な圧力も高まっており、おそらく1月の日銀金融政策決定会合では、物価上昇率目標(インフレターゲット)2%を掲げざるを得ないでしょう。1月の会合でも従来のような「傍観者」の姿勢を貫くようなら、4月の白川総裁の任期切れの前に日銀法の改正へ向けた動きが具体化するとみられます。

 金融政策とともに政府には財政出動による景気対策が求められています。日銀によるインフレターゲットの設定や一段の金融緩和、政府の財政出動による景気の下支え、貿易収支の赤字基調の継続などにより、円売りの流れは継続しそうです。また、米国の「財政の崖」が回避されたことで米長期金利が上昇しており、ドル・円は緩やかに上昇を続けて、1ドル=90円へ向けて上昇する展開が見込まれます。

 今後の経済指標やイベントとしては、7日にユーロ圏11月生産者物価指数、8日に豪11月貿易収支、独11月貿易収支、ユーロ圏11月小売売上高指数、ユーロ圏11月雇用統計、9日に豪11月小売売上高、独11月鉱工業生産指数、10日に豪11月住宅建設許可件数、日本11月景気動向指数、英中銀(BOE)政策金利、欧州中央銀行(ECB)政策金利、米新規失業保険申請件数、11日に日本11月経常収支、中国12月消費者物価指数、中国12月生産者物価指数、英11月鉱工業生産指数、米11月貿易収支などがあります。

【米国では量的緩和を想定より早期に解除?】
 米国では、大型減税の失効と歳出削減が同時に起きる「財政の崖」は何とか回避されました。その動きを受けて、リスクオンの動きとなり、米国株は大きく上昇しました。ただ、3日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、複数の委員がこれまでの資産買い入れで米連邦準備理事会(FRB)のバランスシートの規模の拡大に懸念を表明していることが明らかになりました。量的緩和措置が従来の想定よりも早く見直されるとの思惑から、ドル買いの動きにつながりました。

 米国の経済指標はまちまちながら、それほど悲観的なものはありません。一方、ユーロ圏では12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値が46.1となり、速報値の46.3から下方修正されるなど、ユーロ圏全般の景気動向はさえない状況です。ユーロ圏のPMIは好況と不況の分かれ目である50を下回っており、米国で12月のISM製造業景況指数が50.7となり、前回の49.5から上昇したのとは対照的です。また、4日発表の12月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比15.5万人増となり、事前予想の15.3万人増を上回るなど雇用情勢も緩やかな改善傾向を示しています。

 景気見通しは米国の方がユーロ圏よりも良好な上、米長期金利が「財政の崖」回避で上昇しており、ユーロよりもドルが買われやすい状況となっています。ただ、「崖」からの転落は2カ月間凍結されたものの、今後、米国では財政再建策や債務上限の引き上げなどの問題を決着させる必要があり、一方的にドル高が進む状況でもないとみられます。このため、ユーロ・ドルは1ユーロ=1.28〜1.33ドル台でのレンジ相場が続くことが見込まれます。

【昨年のドル・円は円安で終了、円安の翌年はどうなる?】
 昨年、ドル・円は1ドル=76円台後半で始まり、86円台後半で終えたため、1年間では陽線(円安)で終了しました。ドル・円は、2001〜2011年の11年間で、1年を通して円安で終わった年は、2001年、2005年、2006年、2009年の4回、円高で終わったのは2002〜2004年、2007〜2008年、2010〜2011年の7回あります。

 ここでは、円安で終えた年の翌年、すなわち2002年、2006年、2007年、2010年を元に作成した季節性のグラフを青の「円安の翌年」で示しています。昨年のように円安で終えた年は赤の「円安年」で表示しています。いずれも0〜100の指数で表示しています。なお、2012年(緑)は実際の価格となり、これだけ右軸で表示しています。今年は始まって間もないため、表示していません。

 昨年は特に9月くらいからは、円安年(赤のグラフ)のパターンに沿った動きを見せました。今年は日銀による大胆な金融緩和策や日本の政府による景気対策などから、一段と円安に進むとの期待感も広がります。ただ、「円安の翌年」のグラフを見る限り、円安で終えた年の次の年は春先以降、徐々に円高に傾きやすくなります。

 もっとも、今年も「円安年」のパターンを踏襲する可能性もあります。その場合は3〜4月には1ドル=90円を超えて、さらに上昇しているかもしれません。仮に今年も昨年と同様の円安年のパターンで推移した場合、年末には1ドル=95〜100円前後まで円安が進むことも想定されます。



2013年1月7日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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