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外為マーケットコラム

ドル・円は緩やかな上昇が継続か

【日銀の追加緩和に「無制限」が飛び出すか】
 1月21〜22日に日銀金融政策決定会合が開催されます。物価上昇率目標2%や一段の追加緩和措置などの導入が期待されています。安倍首相はかねてより、日銀に2%の物価上昇率目標の導入や大胆な金融緩和措置を求めており、日銀が追加緩和に動く可能性が高まっています。今回も10兆円程度の追加緩和に動くとの見方が広がっていますが、一部では物価上昇率目標が達成できるまで、「無期限・無制限」の緩和措置が飛び出すと予想する向きもあります。政府と日銀の間では連携強化の枠組みとなる共同文書の内容を詰めており、物価上昇率目標2%を明記した上で、日銀総裁は目標達成への進捗状況を定期的に報告する責任を負う、といった内容になる見通しです。

 なお、15日に甘利経済再生担当相の「過度な円安は輸入物価にはねかえり、国民生活にマイナスの影響もある」の発言を受けて円が買い戻されました。ドル・円は昨年11月中旬から上昇が続いており、利益確定売りの格好の口実となりました。ただ、17日に甘利経済再生担当相は「15日のコメントはメディアが誤って伝えた」となどと述べ、再び円売りの動きとなっています。17日にはドル・円は1ドル=90円台に乗せ、約2年7カ月ぶりの水準まで上昇しました。

 日銀金融政策決定会合に注目が集まり、大方の予想通りの内容ならドル・円は1ドル=90円付近でもみ合った後、再び緩やかな上昇局面に転じそうです。もし、追加緩和の規模や期限が「無期限・無制限」といった予想を上回る規模なら、1ドル=90円を固めて92〜93円前後まで一段と上昇しそうです。その場合、ユーロ・円やポンド・円などのクロス円も一段と上昇することとなるでしょう。

【ユーロは要人発言で高下】
 15日にユーロ圏財務相会合のユンケル議長は、ユーロ相場は「危険なほど高い」と述べました。ユーロ・ドルは14日に昨年2月以来となる1ユーロ=1.34ドル乗せとなり、高値警戒感が台頭していたところへこの発言が出て、上昇一服となっています。ただ、オーストリア中銀のノボトニー総裁は、ユーロ相場は深刻な懸念要因ではないとの見方を示しました。また、短期的な為替の動きを過度に評価すべきではないと述べています。ユーロ圏では目立った材料に乏しいせいか、こうした要人発言に振り回される状況となっています。

 16日に発表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)では、米国内では消費支出が加速して、経済活動はここ数週間で緩やかなペースで拡大したと指摘しています。12地区で慎重ながらも前向きな景気判断がなされましたが、欧州情勢や財政政策への警戒感から、企業や消費者が警戒感を強めていると指摘しています。なお、ベージュブックは2週間後に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の判断材料になるとされています。

 17日の米新規失業保険申請件数は予想以上に減少、また、12月の米住宅着工件数も予想以上に増加するなど、米経済指標は良好なものが続いています。一方、ユーロ圏では経済指標はさえないものの、スペインの国債入札が順調に進むなど、債務懸念への警戒感が一段と後退したことがユーロの下支え要因となっています。こうした中、ユーロ・ドルは1ユーロ=1.31〜1.35ドル前後で推移しそうです。

 今後の経済指標やイベントとしては、21日に独12月生産者物価指数、22日に日銀金融政策決定会合(21〜22日)と政策金利、日本11月景気動向指数、独1月ZEW景況感指数、米12月中古住宅販売件数、23日に豪11月ウェストパック先行指数、豪第4四半期消費者物価指数、英金融政策委員会(MPC)議事録、英12月雇用統計、カナダ銀行(BOC)政策金利、24日に日本12月貿易収支、中国HSBC製造業購買担当景気指数、ユーロ圏11月経常収支、米新規失業保険申請件数、米12月景気先行指数、25日に日本12月消費者物価指数、独1月ifo景況感指数、英第4四半期国内総生産(GDP)速報値、米12月新築住宅販売件数などがあります。

【米大統領選挙の翌年のドル・円の季節性】
 前週は米大統領選挙の翌年のNYダウの季節性の動きをグラフとともに示しました。1985〜2009年の過去7回の米大統領選の翌年のデータによると、NYダウは通常の季節性とはやや異なるパターンとなり、1月は上昇するものの、2〜3月は修正安となり、6月にかけて上昇、上げ一服となった後に7月には再び上昇します。夏場は上値の重い動きとなりますが、10月下旬から一段と上昇する傾向がありました。

 今回は米大統領選挙の翌年のドル・円の動きに注目してみます。青のグラフは1985〜2009年の過去7回の米大統領選の翌年のデータを基に作成したドル・円の季節性です。ピンクのグラフは1993〜2012年の20年分のデータを元に作成したドル・円の季節性です。1年の値動きを0〜100で示しています。緑のグラフは今年(2013年)の価格データですが、これのみ右軸で表示しています。

 過去のパターンによると、大統領選の翌年(青)は4月にかけてドル高・円安傾向で推移しています。その後は6月にかけて下落する傾向が見て取れます。夏場はもみ合いとなりながら、秋口にかけて下落しやすくなります。10月から年末にかけて、大統領選の翌年は上昇する傾向が強くなっています。

 今年は始まったばかりで、ドル・円はどのような動きを見せるのかは予測が難しいですが、日銀による追加緩和期待や物価上昇率目標2%の設定などにより、まだ円安基調は継続する可能性が高いとみられます。そうなれば、春先にかけて一段と円安が進むという過去のパターンに近い動きとなりそうです。



2013年1月21日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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