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外為マーケットコラム

米国の景気や日銀への期待感からドル・円は緩やかに上昇か

【米経済指標良好でNYダウは史上最高値更新】
 4日に米連邦準備理事会(FRB)のイエレン副議長は金融緩和策の継続に積極的な発言をしており、2月26〜27日のバーナンキ議長の議会証言と合わせて、米国での量的緩和措置の継続へ期待感が米株高につながりました。また、2月の米ISM製造業景況指数、2月の米ミシガン大消費者信頼感指数(確報値)、2月の米ISM非製造業景況指数、2月の米ADP雇用統計、米新規失業保険申請件数、2月の米雇用統計など予想より良好な統計が相次ぎました。

 米国の景気の先行きに明るい見通しが広がり、FRBによる量的緩和継続への期待感もあって、NYダウは連日で史上最高値を更新しています。株高を背景に米国では国債から株式などに資金がシフトして、米10年物国債利回りはじり高で推移して2%超まで上昇しました。7日にドル・円は1ドル=95円台に乗せ、8日には強い米雇用統計を受けて、1ドル=96円台に乗せています。

 一方、6〜7日に開催された日銀金融政策決定会合では、政策金利は据え置き、資産などの買い入れ基金の規模も変更はありませんでした。白川総裁最後の決定会合であり、事前の報道では「消化試合」と言われて、政策上の変更はないとの見方がかなり強かったため、インパクトに乏しいものでした。

 次期日銀総裁候補の黒田東彦・アジア開発銀行(ADB)総裁は4日の所信表明で、日銀の物価上昇率目標2%の早期実現に向け、「やれることは何でもやる」との意向を表明しました。5日には副総裁候補の岩田規久男・学習院大教授と中曽宏・日銀理事が所信表明を行い、大胆な金融緩和へ前向きな姿勢を見せました。これまでの報道によると、この3名は日銀正副総裁として国会で承認される見通しで、新総裁が就任して最初に実施される4月3〜4日の日銀金融政策決定会合では、踏み込んだ緩和策が出てくる可能性が高いとみられます。

 米国の経済指標が良好で、米国では株高が続いている上、米長期金利はじり高で推移しており、ドルは買われやすい展開が続きそうです。日銀は追加緩和に前向きな正副総裁が新たに就任する見通しで、円は売られやすいことから、ドル・円は緩やかな上昇を続けるものとみられます。1ドル=93〜97円台での推移が見込まれます。

【ECBは利下げの手がかりを与えず】
 7日の欧州中央銀行(ECB)理事会では政策金利は0.75%に据え置かれました。理事会後の記者会見でドラギ総裁は、将来の追加緩和について市場関係者が期待したような踏み込んだ発言をしませんでした。このためECBが早期に利下げに踏み切るとの観測が後退しました。なお、ECBは2013年のユーロ圏成長率見通しをマイナス0.5%に引き下げたものの、ドラギ総裁は2013年のより遅い時期には経済活動は緩やかに回復するとの見解を示しています。

 なお、イタリアの政局は混沌としており、一時は欧州債務危機の再燃も懸念されました。8日に格付け会社フィッチ・レーティングスがイタリアの格下げを行っており、今後の動きが警戒されます。ただ、イタリアの10年物国債の利回りは4.5〜4.8%付近で落ち着きを見せています。

 米株高が上昇していることで、従来はリスクオンでユーロが買われましたが、このところは米長期金利が上昇していることからドル買いの動きにつながりやすくなっています。ユーロ、円、ポンド、スイスフランなど6通貨から構成されて、ドルの強さを示すドル・インデックスは、8日に82.924まで上昇して、昨年8月以来の高水準となっています。

 ユーロ・ドルは上値の重い動きが続いており、1ユーロ=1.30ドルを割り込みました。ただ、それほど極端に崩れてはいません。今後は米国を中心とする経済指標に左右されやすく、良好な米経済指標が続くと、ドル買いの動きからユーロ・ドルは上値重く推移しそうです。このため、1ユーロ=1.27〜1.32ドルのレンジで推移するとみられます。

 今後の経済指標やイベントとしては、11日に独1月貿易収支、12日に独2月消費者物価指数改定値、英1月鉱工業生産指数、13日にユーロ圏1月鉱工業生産指数、米2月小売売上高、14日に豪2月雇用統計、日本1月鉱工業生産指数、米新規失業保険申請件数、15日にユーロ圏2月消費者物価指数改定値、米3月NY連銀製造業景気指数、米2月消費者物価指数、米2月鉱工業生産・設備稼働率、米3月ミシガン大学消費者信頼感指数などがあります。

【CFTC建玉明細、ユーロの売り越しが増加】
 米商品先物取引委員会(CFTC)は毎週金曜日にその週の火曜日時点での建玉明細を発表しています。この中で、大口投機家の売り越し幅、買い越し幅の変動は、相場の方向と連動性が高いケースが多く、特に注目されています。

 グラフはユーロ・ドルの大口投機玉の建玉明細のグラフで、水色はユーロ・ドルの終値(これのみ左軸)、緑の棒グラフは買い玉、ピンクは売り玉です。赤は買い玉から売り玉を差し引いたネットポジションで、最も注目される数値となっています。赤のグラフがゼロより下にあるときは大口投機玉は売り越し、赤がゼロより上なら買い越しとなります。

 グラフによると、ユーロ・ドルが堅調に推移したことで、ユーロの大口投機玉は昨年までは売り越しが続いていたものの、売り越し枚数は徐々に減少して、今年に入って買い越しに転じていました。2月5日には37,952枚まで買い越しが増加したものの、その後買い越し枚数が減少に転じて、2月26日には再び売り越しに転じました。3月5日時点では26,116枚の売り越しとなり、前週(2月26日)の9,394枚の売り越しから増加しています。

 イタリア政局への不透明感やユーロ圏の景気減速の影響でユーロ買いが続きにくくなっています。また、米国の経済指標が良好なものが多いこともあり、ドルが買われやすくなっており、ユーロの売られやすい状況が続いています。イタリア政局への懸念が払しょくされない限り、ユーロは売り越しの状況が続きそうです。



2013年3月11日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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