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外為マーケットコラム

ドル・円はキプロス支援の影響で荒れた動きか

【米経済指標は良好】
 このところの米経済指標は良好なものが続いています。特に8日の2月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比23.6万人増となり、事前予想の16.5万人増を大きく上回り、失業率も7.7%に低下しました。また、13日の2月の米小売売上高は前月1.1%増となり、事前予想の0.5%増を上回り、14日の米新規失業保険申請件数も事前予想を下回りました。経済指標のポジティブ・サプライズにより、株価は堅調でNYダウは連日のように史上最高値を更新してきました。

 米国では米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和策はまだ当面は続くとの見方が根強いものの、経済指標の好転で景気回復への期待感も高まり、米10年物国債の利回りは2%近辺で推移しています。米株高もあって、ドルは上昇しており、ユーロ、円、ポンド、スイスフランなど6通貨から構成されて、ドルの強さを示すドル・インデックスは、14日に83.166まで上昇して、昨年8月以来の高水準となっています。経済指標の改善がさらに進むと、ドルはさらに買われやすくなりそうです。

 一方、日本国内に目を移すと、20日に次期日銀総裁に就任する黒田東彦氏は、就任直後に臨時の金融政策決定会合を開催して、次回(4月3〜4日)の会合を待たずに追加緩和へ動き出すとの見方が台頭しています。新正副総裁のもとで最初に開催される決定会合では、国債の購入対象を期間3年までから5年以上に拡大、2014年以降に導入予定の金融資産の無期限買い入れの前倒しの実施など、市場関係者に日銀の変化を感じさせる政策を打ち出してきそうです。

 前週末に開催されたユーロ圏財務相会合で、キプロスへの支援で合意したことを受けて、週明けの早朝のオセアニア市場ではユーロ・円が急落しており、その動きに追随してドル・円も一時1ドル=93円台半ばまで下落しました。本来であれば、ドルは米国経済の堅調で買われやすく、円は日銀の一段の緩和期待から売られやすいとみられるため、ドル・円は調整を入れつつも、中期的には上昇基調で推移する可能性が高いとみられます。ただ、目先はキプロスの問題に振り回されて、1ドル=92〜96円台で荒れた動きとなりそうです。

【キプロス支援の影響でユーロが売られる】
 週末のユーロ圏財務相会合で、キプロスに対して100億ユーロの支援をすることで合意しました。ただ、キプロスの預金者に対して課徴金を課すという、異例の内容となったことで、週明けのオセアニア市場ではユーロが急落しました。ユーロ・ドルは前週末の1ユーロ=1.30ドル台半ばから、1.29ドル割れまで下落しています。キプロス支援は大きな問題もなく合意に達するとみられていたため、ネガティブ・サプライズとなりました。キプロスとしては支援策の修正を求めるようですが、目先はこの問題に振り回されることとなりそうです。

 また、13日に実施されたイタリア国債の入札では、利回りが上昇した上、応札倍率が低下しました。14日のスペイン国債の入札では、利回りは低下して、応札倍率は上昇したものの、市場関係者の見込みほど需要が集まりませんでした。イタリアの政治的な混乱やスペインの大規模な財政赤字が根底にあるとみられます。

 19〜20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が注目されます。最近、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長やイエレン副議長は量的緩和の縮小を急がない意向を示しており、金融政策の大きな変更はないでしょう。FOMCで追加緩和を継続する重要性を強調するようだと、米国株は上昇するとみられますが、資産買い入れの継続期待から米国債は買われて利回りが低下する可能性があります。その場合、米株高が進んでもドル買いにつながるとは限りません。

 ただ、米経済の好調さから出口戦略が意識され、早期の量的緩和の解除への思惑が台頭する可能性もあります。その場合は、米長期金利の上昇要因となり、米国株には圧迫要因となります。次回のFOMCでどのようなスタンスが示されるかが注目されます。

 今月に発動した米国の歳出強制削減の影響も懸念されます。このところの経済指標は良好ながら、今後の米国の経済成長の足を引っ張り、失業率の低下の障害となる可能性も出てきます。足元の米国経済は景気回復を期待させる堅調な動きながら、先行きには懸念材料を内包している状況です。

 ユーロと比べてドルは堅調ながら、米国の歳出の強制削減や財政問題などもあり、ドルだけが一方的に買われるような状況になりにくいとみられます。キプロス支援策への警戒感もあって、ユーロ・ドルは緩やかな下落基調で推移しそうです。目先のレンジは1ユーロ=1.27〜1.31ドル前後で、戻りは売りに押されやすい展開が見込まれます。

 今後の経済指標やイベントとしては、18日にユーロ圏1月貿易収支、19日に日本1月景気動向指数、英2月消費者物価指数、独3月ZEW景況感指数、米2月住宅着工件数・建設許可件数、20日に独2月生産者物価指数、英金融政策委員会(MPC)議事録、英2月雇用統計、米連邦公開市場委員会(FOMC、19〜20日)、21日に日本2月貿易収支、中国HSBC製造業購買担当景気指数、英2月小売売上高指数、米新規失業保険申請件数、米3月フィラデルフィア連銀景況指数、米2月中古住宅販売件数、米2月景気先行指数、22日に独3月ifo景況感指数などがあります。

【ドル・円の季節性では一段の円安進行を示唆】
 キプロス支援の問題で、足元はやや円高に振れていますが、ドル・円は年初から円安基調が続いてきました。日銀に対する一段の金融緩和への期待感などが背景にあります。一方で、米国では良好な経済指標が多く、米株高、米長期金利高につながり、ドルも買われやすくなっています。

 ここでは、ドル・円の季節的なパターンを用いて、今度の動向の参考としてみます。ピンクのグラフは1985〜2009年の過去7回の米大統領選の翌年のデータを基に作成したドル・円の季節性です。青のグラフは2001〜2012年の間で円安で終わった年の翌年の季節性のデータです。赤のグラフは2001〜2012年の間で円安で終わった年の季節性データです。いずれも1年の値動きを0〜100で示しています。緑のグラフは今年(2013年)の価格データで、これのみ右軸で表示しています。

 これによると円安の翌年(青)は今年の緑のグラフと合っていませんが、円安年(赤)と米大統領選の翌年(ピンク)とは似たような動きを示しています。赤とピンクのグラフは4月のはじめにかけて円安トレンドが続いており、季節性からは一段の円安を示唆しています。今の調子でドル・円が上昇を続ければ、1ドル=100円に乗せる可能性高まりそうです。

 ただ、その場合、円安年(赤)と米大統領選の翌年(ピンク)はいずれも4月に入ると下げに転じており、6月くらいにかけてドル・円は円高に傾きやすくなっています。過去のパターンに似た動きとなり、4月はじめまで円安が進んだ場合は、短期間で円安が進んだ反動から調整局面を迎える可能性が出てきそうです。なお、このグラフは過去のパターンを基にしたものであり、この通りになるとは限らないものの、今後の値動きの判断材料にはなりそうです。



2013年3月18日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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