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外為マーケットコラム

ドル・円は米経済指標やイベントに左右される展開か

【ドル・円は100円手前で足踏み】
 26日の日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持を全員一致で決定しました。前回(4月3〜4日)の金融政策決定会合では、「量的・質的緩和」の導入に踏み切っており、必要とみられる政策をすべて講じたこともあり、今回は特に大きな変化はないとの見方が広がっていました。ただ、一部には一段の緩和策を予想する向きもあり、さらに26日発表の今年第1四半期の米国内総生産(GDP)が予想を下回ったことなども加わり、ドル・円は1ドル=97円台まで円高に振れています。

 日本の生命保険会社が日本国債に代わる運用先として、外債の運用を増やすとの期待感が広がっています。外債の運用を積極化すれば、円安が進むことが見込まれる上、海外の国債の利回りが低下すると予想されます。こうした動きに先回りして動く投機筋もあるようですが、実際のところ、まだ日本の生保は積極的な外債投資の動きには出ていないようです。むしろ円安の進行で利が乗った外債を売却して利益確定に動くほうが大きいようです。

 財務省の対外・対内証券投資で国内の投資家による外国債(中長期債)は、4月7〜13日は3,328億円(改定値)の売却超過となり、外債の取得よりも売却の方が大きくなりました。4月14〜20日は8,626億円の売却超過となっており、前週以上に外債の取得よりも売却の方が大きくなりました。大手の機関投資家である生保が外債投資に動くにしても、円高局面で機を見てということになりそうです。生保にあまり期待しすぎても肩透かしを食うだけになる可能性が高そうです。

 今後の経済指標やイベントとしては、30日に独4月雇用統計、ユーロ圏4月消費者物価指数、ユーロ圏3月雇用統計、米2月S&Pケースシラー住宅価格指数、米4月シカゴ購買部協会景気指数、米4月消費者信頼感指数、1日に中国製造業購買担当景気指数(PMI)、米4月ADP雇用統計、米4月ISM製造業景況指数、米連邦公開市場委員会(FOMC)、2日に豪3月住宅建設許可件数、中国HSBC製造業購買担当景気指数(PMI)、欧州中央銀行(ECB)政策金利、米3月貿易収支、米新規失業保険申請件数、3日に米4月雇用統計、米4月ISM非製造業景況指数などがあります。

 今週は、上記のように米国で注目度の高い経済指標の発表が相次ぐ上、FOMCやECB理事会などの重要イベントがあります。また、中国のPMI関係の指標も要注意です。ドル・円は、米国の指標が良好ならドル買いが進んで、1ドル=100円に乗せることとなりそうです。ただ、1ドル=100円の壁は厚く、100円手前で足踏みする動きが続いているため、米国や中国の経済指標がいまひとつだと、1ドル=95〜96円台まで下落する可能性が出てきそうです。

【ECBは利下げに動く可能性】
 5月2日の欧州中央銀行(ECB)理事会で、利下げの可能性が出てきています。ECBは金利を変更する場合、事前に当局者が金利変更を示唆するような発言を繰り返すことが多くみられます。今回はコンスタンシオ副総裁、アスムセン専務理事、バイトマン・ドイツ連銀総裁が景気認識への警戒感や利下げの可能性を示唆しています。

 ただ、一方で利下げの検討は時期尚早との意見もあります。ボニチ・マルタ中銀総裁は、「金利がすでに非常に低く、利下げによるメリットがおそらくあまりない」、クノット・オランダ中銀総裁は、「利下げに踏み切る場合には慎重を期すべき」、ノボトニー・オーストリア中銀総裁は「追加利下げめぐる判断は時期尚早」との見解を示しています。このようにユーロ圏の金融当局者の見解はひとつにまとまっているわけではありません。

 ユーロ圏の経済指標はどれもいまひとつで、最近は牽引役のはずのドイツの経済指標もさえない状況です。4月の独製造業購買担当者景気指数(PMI)は47.9となり、事前予想を下回りました。4月の独IFO景況指数は104.4となり、事前予想の106.2を下回るなど、ドイツの景気減速への懸念が台頭しつつあります。市場関係者の間では、ECBが政策金利を0.25%利下げして、0.50%にするとの見方が広がっています。

 そうした中、イタリアでは新内閣が発足しており、2カ月間の政治的空白に終止符が打たれ、政局が安定するとの期待感が広がっています。ユーロ圏の景気悪化やECBの利下げ観測はユーロの圧迫要因ですが、イタリアの政局安定は下支え要因となりそうです。

 ユーロ圏の景気悪化やECBによる利下げの可能性を考慮すると、ユーロには強気になりにくい状況です。ただ、米国の経済指標も最近は予想を下回るものが多く、5月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では量的緩和の継続が確認される可能性が高そうです。そうなると、ドルも売られやすくなるとみられ、ユーロ・ドルは1ユーロ=1.30ドルを挟んで、1.28〜1.32ドルのレンジで推移しそうです。なお、ECBが利下げに動くとユーロは売られそうですが、一時的な動きにとどまるとみられます。

【5月の月足の陽線確率:方向感の出にくい季節】
 グラフは2003〜2012年の10年間について、主要通貨や商品などが5月の月足が陽線になった比率を示しています。陽線とは終値が始値よりも上昇したことを意味しています。ここで、ドル・円やクロス円が陽線になりやすい(すなわち上昇しやすい)ということは、円安に振れやすいということを示しており、陰線になりやすい(下落しやすい)ということは円高になりやすいということを示しています。

 グラフの棒グラフは5月の陽線確率(左軸)、ピンクの折れ線は通貨の値幅(pips)を示しています(右軸)。これによると、5月の陽線確率は豪ドル・ドルが30.0%と豪ドル安/ドル高に振れやすくなっています。それ以外の通貨は、40.0〜60.0%の範囲に収まっており、それほど目立ったバイアス(偏り)がありません。

 過去の統計的な偏りがあまりないことから、5月は月足としては方向感が出にくい季節のようです。一方、通貨以外では、NY原油(WTI原油)とドル建て金現物が50.0%、NYダウは40.0%といずれも通貨と同様に極端なバイアスのない月となっています。

 なお、過去10年間の各通貨の5月の平均値幅は次の通りです。通貨間で標準化するためpipsで表示しています(カッコ内は4月の値幅)。ドル・円は448(453)、豪ドル・円は552(454)、豪ドル・ドルは542(417)、ポンド・円は946(784)、ポンド・ドルは843(660)、ユーロ・円は756(691)、ユーロ・ドルは729(557)となっています。通貨にもよりますが、5月は4月と比べておおむね値幅は大きくなる傾向があります。



2013年4月30日

(オーバルネクスト/佐藤 昌彦)

株式会社オーバルネクスト 情報企画グループ 主任研究員 佐藤 昌彦

担当
為替、日経、商品先物市場
信条
ファンダメンタルズによる解説だけでなく、データの統計的な分析や、サヤ取りなどにより、なるべくリスクを抑えて、投資家の方が優位性を持てるような情報の提供を心がけています。
経歴
1994年にゼネックス(現オーバルネクスト)入社。現在、主任研究員。為替・金融・コモディティのアナリストとしてマーケットの分析・記事の執筆作業に従事。現在は為替や日経の分析記事の執筆が中心。データの統計的な分析を得意としており、日経平均、ドル・円、ユーロ円など為替市場の日中足を用いた分析記事の執筆も担当。

株式会社オーバルネクスト

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