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外為マーケットコラム

米雇用統計が強気ならば1ドル=125円台に上昇か

 5月25日からのドル・円は一段高となり、2002年12月以来の高値となる1ドル=124.40円台に続伸した。米金利引き上げ観測が強まったことがドル買い意欲を高めた。ドル上昇のきっかけは5月19日に発表された4月の米住宅着工件数が予想以上の急増となったことだ。その流れは3連休明けの26日も変わらず、ドルは対円で買い進まれた。

 26日は強気の米経済指標に発表が相次いだ。全米20都市部を対象にした3月の米住宅価格指数は昨年8月以来の大幅な伸びとなり、4月の米新築住宅販売件数は予想以上に増加し、5月の米消費者信頼感指数は事前予想を上回るなど米景気の回復力の強さを示す数字となった。それらの数字に敏感に反応し、123.30円台へ値を飛ばした。ファンドを含めた投機資金がドル買い、円売りを加速させたこともドル高、円安要因。

 27日以降も強気の米経済指標から米利上げ観測を材料にドル買いの動きが続き、放れた時の勢いを感じさせた1週間だった。

 今週は3日発表の5月の米ADP雇用統計を皮切りに米労働市場に関する米経済指標の発表が続く。5日に米労働省から発表される5月の米雇用統計を中心に強気の数字が出ればドル買い意欲がさらに強まることになろう。

 今週の予想レンジは1ドル=122円台半ば〜125円台前半。支持線は123.20円、122.70円(5月27日の安値水準)。122円の節目、抵抗線は125円の節目、2002年12月につけた125.70円。

【ドル・円は大幅続伸、米利上げ観測で12年半ぶりの高値水準へ】

 ドル・円は大幅続伸。予想以上にドル高、円安が進んだ。25日は米国が米戦没将兵追悼記念日(メモリアルデー)、英国がスプリングバンクホリディーで休場となったが、23日に米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が年内の利上げの可能性を示唆したことで1ドル=121円台で堅調に推移し、次のドル買い材料の出現待ちとなった。

 26日は25日にフィッシャー副議長が当局のプロセスは日付ではなく、経済データで決まると言明するなか、4月の新築住宅販売件数が前月比6.8%増の51万7,000件となり、大方の事前予想の50万8,000件を上回り、前月の数字が48万4,000件と速報値の48万1,000件から上方修正された。また全米20都市部を対象にした3月の米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)/ケース・シラー住宅価格指数が前年同月比5.04%上昇となり、事前予想の4.6%上昇を上回った。4月の耐久財受注高は前月比0.5%減となったが、前月が0.6%増と速報値の0.2%減から上方修正された。強気の米経済指標が揃ったとことに敏感に反応し、123.30円台へ大幅続伸となった。

 27日は新たな強気の米経済指標の発表はなかったが、26日に引き続き米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長など複数の当局者による利上げに前向きな発言や、最新の米経済指標の改善などを受けた利上げ時期の前倒し観測の強まりが背景となったドル買い、円売りの勢いは衰えず、124円台を試し、123.70円台で引けた。

 28日は米週間新規失業保険申請件数が28万2,000件となり、事前予想を上回ったが、12週連続して30万件を下回ったことで特にドル売り材料につながることはなかった。この日はサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁がシンガポールでの講演後に、年内の利上げの公算が大きいとし、利上げについては6月を含めた全ての連邦公開市場委員会(FOMC)で検討されるだろうと語ったことで米利上げ観測が強まり、124.46円と2002年12月6日の高値以来、約12年半ぶりの高値水準へ一段と上昇した。その一方でドイツのドレスデンで開催中の7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に出席しているルー米財務長官が麻生財務相との会談で、競争力目的の為替レート利用をけん制したとの報に反応し、一時、123.59円まで急落する場面があったが、日米当局の金融政策の方向性の違いなどに下支えられ、終盤は124円近辺で底堅く推移した。ドルの上昇ピッチが早過ぎることに対する警戒感はあるが、ドル買い意欲は強く、押し目はすかさず買われる展開だった。この日、全米不動産業者協会(NAR)から発表された4月の中古住宅販売仮契約指数は前月比3.4%上昇と事前予想の0.9%上昇を大幅に上回った。

 29日は小幅続伸。1−3月(第1四半期)・米国内総生産(GDP)改定値は前期比−0.7%となり、速報報値の0.2%増加から下方修正された。事前予想は−0.9%だったため、特にドル売りにつながらず。5月のシカゴ購買部協会景気指数は46.2となり、3カ月ぶりの水準へ低下したが、5月の米ミシガン大消費者信頼感指数確報値が90.7となり、速報値の88.6から予想以上に上方修正されたことで強弱材料が交錯するなか、124.10円台で取引を終了し、改めてドル買いの強さが認識された。29日の終値ベースで14日間の相対力指数(RSI)が79.13まで上げ、買い過剰感が強まるほど総強気ムードで先週の取引を終えている。

【ユーロ・ドルは1カ月ぶりの安値をつけた後に反発】

 ユーロ・ドルは5月27日に1ユーロ=1.0817ドルまで下落し、約1カ月ぶりの安値をつけた後、その日から反転し、29日には1.100ドルの節目を試す戻りとなった。

 27日の場中から自律修正高となり、28日は5月のユーロ圏景況感指数が103.8と事前予想(103.5へ低下)に反して上昇し、4年ぶり高水準付近を維持したことなどが支援材料となり、1.0950ドル台に続伸した。29日はギリシャが今後3週間に国際通貨基金(IMF)に対し約16億ユーロの返済期限を迎えるなか、依然として債務交渉に大きな進展が見受けられず、ギリシャ不安が強かったが、何らかの解決策が立てられるはずとの見方がユーロの買い戻しの口実となった。

 米国とユーロ圏の金融政策の違い、ギリシャ不安と、ファンダメンタルズからすると、ドル買い、ユーロ売りが有利とみられる。ギリシャ不安が後退すればユーロの買い戻しが進む可能性があるが、米労働市場に関する経済統計が強気ならば、再度、ユーロ売り、ドル買いが仕掛けられる展開か。

【投機家の円売り越しが4万枚以上の急増=CME】

 米商品先物取引委員会(CFTC)は5月29日に5月26日現在の建玉明細を発表した。シカゴ円(CME)市場で大口投機家の円の売り越し幅は、6万2,224枚となり、5月19日 現在の2万2,005枚売り越しから4万219枚の急増となった。1ドル=120.84円の抵抗線を突破したことで円売り仕掛けの動きが急増。27日以降も円売りが続いているもよう。125円の節目を目指すことを見込んで売りを仕掛けた投資家が多かったとみられる。押し目を待つ投資家は多いと予想。押し目のメドは123.20円台。この水準は抵抗線であった120.84円から28日の高値124.45円までの上げ幅3.61円に対し、3分の1押しにあたる。

 シカゴユーロ(CME)市場は5月26日現在、大口投機家の売り越し幅は17万1,740枚となり、5月19日現在の16万8,339枚から3,401枚の増加。前回まで減少傾向が続いていたが、売り、買いとも増加するなか、売り越し幅が増加。5月に入ってからの買い戻し先行で売り過剰感が解消されており、ユーロ売りが仕掛けやすく、ユーロ売り人気が再燃した。ただ27日からユーロが反発し29日には1ユーロ=1.100ドルの節目を試すまで反転した。1.100ドル水準では戻り売りと買い戻しが交錯したもよう。1.100ドル台が定着すると買い戻しが先行するとみる。

 今週の主要な経済統計、イベントは以下の通り。

1日 
   独5月消費者物価指数速報値
   米4月個人所得・支出
   米5月ISM製造業景況指数、米4月建設支出
2日 
   豪第1四半期経常収支
   豪中銀(RBA)政策金利
   独5月雇用統計
   ユーロ圏5月消費者物価指数速報値、ユーロ圏4月生産者物価指数
   米4月製造業受注指数
3日 
   豪第1四半期国内総生産(GDP)
   ユーロ圏4月雇用統計、ユーロ圏4月小売売上高指数
   米MBA住宅ローン申請件数
   欧州中央銀行(ECB)政策金利、ドラギ総裁記者会見
   米5月ADP雇用統計
   カナダ4月貿易収支
   米4月貿易収支
   米5月ISM非製造業景況指数
   米地区連銀経済報告(ベージュブック)
4日 
   豪4月貿易収支
   豪4月小売売上高
   英中銀(BOE)政策金利
   米第1四半期非農業部門労働生産性指数
   米新規失業保険申請件数
   カナダ5月Ivey購買部協会指数
5日 
   日本4月景気動向指数
   独4月製造業受注指数
   ユーロ圏第1四半期域内総生産(GDP)改定値
   カナダ5月雇用統計
   米5月雇用統計

2015年6月1日

(インベステック/森 成俊)

株式会社インベステック 森 成俊

担当
為替、先物市場
経歴
1992年より商品先物業界でアナリスト業務に従事。1997−99年まで商品、為替調査会社のNY現地法人勤務。1999年に帰国後は商品相場に加え、為替情報もメディアを通して発信。現在、ラジオNIKKEIマーケットトレンドにて商品、為替市場に関してのコメンテーターを務める。ドル・円、ユーロ・ドル中心に為替を取り巻く環境、テクニカル分析を交え、為替取引の一段拡大を目指し、わかりやすい解説を心掛けている。

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