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外為マーケットコラム

トランプリスクでドル急落も

 ドル・円相場は10月28日に1ドル=105.53円と3カ月ぶりの高値を付けたが、3日には102.55円と1カ月ぶりの水準まで下落した。米連邦捜査局(FBI)によるヒラリー民主党候補の新たなメール問題の捜査開始を受け、一部メディアの調査でトランプ共和党候補の支持率がクリントン候補を上抜いたと伝えられ、8日の大統領選結果への不透明感が強まるなか、リスク回避のムードが広がっていることが背景にある。
 選挙結果はふたを開けてみないとわからないが、クリントン候補が勝利すれば安心感が広がり、リスク回避の動きが後退することからドルが買い戻されるだろう。12月の利上げの可能性はほぼ市場に織り込まれているとみるが、日欧と比較すれば足元の米経済は強く、インフレの伸びも高いことなどから、引き続きドル・円は200日移動平均(107円近辺)を視野に入れた展開が見込まれるところ。一方で、トランプ候補の勝利となれば、不確実性の高まりというリスクを市場は十分に織り込んでいないとみられるだけに、ドルが急落する可能性がある。その場合、ドル・円は100円の壁をあっさり割り込み、90円台へとレンジを下げての局面が続くこととなるのではないか。

【米指標は12月の利上げを後押し】
 1−2日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場の予想通り短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準を0.25〜0.50%に誘導することで据え置かれた。声明ではインフレ率がやや上昇するなか、利上げの論拠が強まってきたとの見方が示された。足元の米指標をみると、12月の利上げを後押しするものが目に付く。
 9月の個人消費支出(PCE)は前月比0.5%増と3カ月ぶりの高水準となり、連邦準備理事会(FRB)が利上げを判断する際に重視するコアPCE物価指数は前年同月比1.7%上昇と前月から横ばいも、FRBの見通しに沿っている。米供給管理協会(ISM)発表の10月の製造業景気指数は前月から小幅上昇し、現時点で昨年の平均水準近くで推移し、非製造業総合景況指数は11カ月ぶりの高水準となった前月から低下も、今年1−9月平均とほぼ同水準。10月の雇用統計では非農業部門雇用者数は前月比16万1,000人増と予想(17万5,000人増)を下回ったが、8月と9月の数字が上方修正された。1−10月の平均は18万1,000人増と、前年の22万9,000人増を下回っているが、雇用拡大ペースが続いていることに変わりはない。また、平均時給は前年比2.8%上昇と2009年6月以来の高い伸びとなった。
 ただし、12月に利上げが決定されても、その後は引き続き経済指標を見極める必要がある。景気回復もインフレも緩やかな伸びにとどまっており、先行きの過熱感が強まるような状況にはなく、当局の緩やかなペースでの利上げ姿勢に変化が出てこないかもしれない。

【物価目標の達成見通し先延ばしは5度目】
 日本銀行は10月31日と11月1日に開催した金融政策決定会合で、政策金利と国債買い入れのペースを維持することを決定した。前回に政策の枠組みを変更したばかりで、市場も追加緩和などを見込む向きはなかった。同時に公表された日本経済の見通し「経済・物価情勢の展望(展望リポート」)では、2017年度中としていた2%の物価目標の達成時期を2018年度ごろに先送りし、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きいと指摘された。
 物価目標の達成時期の先送りは5度目となり、2018年4月に任期が切れる黒田日銀総裁は政策決定会合後の記者会見で、物価目標を2年で達成できなかったことは残念とする一方、目標達成に向けてあらゆる手段を動員して実現しなければならないことには変わりはない、とあらためて述べた。ただし、生鮮食品除く9月の全国消費者物価指数は7カ月連続してマイナスとなり、大規模緩和政策でもデフレから脱却できないのが現状だ。

【ユーロ圏は緩やかな景気回復基調続く】
 ユーロ圏経済は引き続き6月の英国の欧州連合(EU)離脱選択の負の影響はほとんど見受けられず、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和政策が功を奏し、好調な独経済にけん引され、緩やかなペースでの成長拡大が続いているようだ。
 10月の独消費者物価指数(CPI)は、EU基準で前年同月比0.7%上昇と2年ぶりの高い伸びとなった。10月の独失業率は6.0%と前月(6.1%)から低下し、過去最低水準を更新。失業者数は前月比1万3,000人減の266万2,000人と市場予想(1,000人減)を大幅に下回り、雇用者数は過去最高水準で推移している。
 10月のユーロ圏CPI速報値は前年同月比0.5%上昇と前月から加速。サービス価格が今年最高水準で推移し続け、エネルギー価格の下落率が前月から大きく縮小したことが寄与した。第3四半期・ユーロ域内総生産(GDP)速報値は前期比0.3%増、前年比1.6%増と前期比で横ばいに推移し、10月のユーロ圏製造業購買担当者指数(PMI)改定値は速報値から上方修正され、製造業活動は2014年初め以来のペースで拡大が続いている。

【英中銀は利下げ見通し撤回】
 イングランド銀行(英中央銀行)は3日、2日間開催した金融政策委員会で、政策金利を0.25%に、資産購入規模を4,350億ポンドに据え置く一方、ポンド安によるインフレ加速を背景に年内の追加利下げ見通しを撤回。2017年のインフレ率見通しを2.7%と従来の2.0%から大きく上方修正し、来年前半に目標の2%を超え、その後も同水準を上回って推移すると予想し、先行きの利上げの可能性を示唆した。
 第3四半期・英GDP速報値は前期比0.5%増となり、前年同期比ともに予想を上回り、6月のEU離脱選択後も底堅い成長が続いている。10月の英サービス部門PMIは1月以来の高水準となる一方、投入コストは2011年3月以来の高い伸びとなり、ポンド安の影響が示された。想定以上のペースでの物価上昇が警戒され、金融政策の転換期を迎えそうだ。


【NYウォールストリートに掲げられる星条旗。今週は新たな4年の始まり】

【主要経済指標・イベントレビュー】
31日 ユーロ圏消費者物価指数速報値(HICP、10月):前年比+0.5%
   第3四半期・ユーロ域内総生産(GDP)速報値:前期比+0.3%
   米個人所得・支出(9月):所得は前月比+0.3%、消費支出は前月比+0.5%
   シカゴ購買部協会景気指数(10月):50.6
1日 日銀金融政策決定会合:金融政策は据え置き
   米ISM製造業景気指数(10月):51.9
2日 独雇用統計(10月):失業率は6.0%、失業者数は1万3,000人減
   独製造業購買担当者指数(PMI)改定値(10月):55.0
   ユーロ圏製造業PMI改定値(10月):53.5
   米ADP雇用統計(10月):14万7,000人増
   FOMC:政策金利を据え置く
3日 英サービス部門PMI(10月):54.5
   英中銀金融政策委員会:政策金利、資産購入規模を据え置く
   米週間新規失業保険申請件数:26万5000件
   米ISM非製造業景況指数(10月):54.8
   米製造業新規受注(9月):前月比+0.3%
4日 独PMI改定値(10月):総合は55.1、サービス部門は54.2
   ユーロ圏PMI改定値(10月):総合は53.3、サービス部門は52.8
   米貿易収支(9月):364億ドルの赤字
   米雇用統計(10月):失業率は4.9%、非農業部門雇用者数は16万1000人増

【11月7日からの週の注目ポイント】
7日 日銀金融政策決定会合議事録公表             ☆☆☆
   独製造業新規受注(9月)                ☆☆☆
   ユーロ圏小売売上高(9月)                ☆☆
8日 中国貿易収支(10月)                   ☆☆
   独鉱工業生産指数(9月)                 ☆☆
   英鉱工業生産指数(9月)                 ☆☆
9日 日本貿易・経常収支(9月)                ☆☆
   中国消費者物価指数(CPI、10月)             ☆☆
10日 日本機械受注(9月)                   ☆☆
   米週間新規失業保険申請件数                ☆☆
11日 独CPI改定値(10月)                  ☆☆☆
   米ミシガン大消費者信頼感指数速報値(11月)        ☆☆
*重要度を3段階で表示

2016年11月7日

(みんかぶ/NYのもののふ)

株式会社みんかぶ NYのもののふ(ペンネーム)

担当
商品先物・金融市場
経歴
1994年から商品先物業界で市況作成・アナリスト業務に従事。主に工業品銘柄を担当し、1999年からは投資情報会社のニューヨーク駐在員としてニューヨーク在住。主に市況作成に従事。現在は、原油中心で為替、貴金属、穀物に関する情報も配信。
読み手に容易に理解していただけるような情報配信を目指している。

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