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外為マーケットコラム

ドル高・円安ペースは緩やかに

 ドル・円は18日に1ドル=111円近辺と5月31日以来の水準へ急上昇。トランプ次期米大統領が掲げる政策が米経済成長を押し上げるとの期待感から世界的な株高が続き、積極的なインフラ投資や巨額減税による財政悪化・インフレ懸念の高まりを背景に長期金利の指標となる10年物米債利回りは昨年12月末以来の水準へ上昇し、ドル高局面が鮮明になっている。17日には米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が、上下両院の合同経済委員会で証言し、経済指標次第で利上げは比較的早期となることが適切との見方を示したことで、来月13〜14日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げは確実視され、主要6通貨に対するドル指数は2003年4月以来の高水準へと大きく切り上がっている。
 8日の米大統領選でのトランプ氏の勝利を受け、金融市場の先行きの見通しがガラリと変わってしまった。トランプリスクを警戒しドル安を見込んでいた市場参加者の多くが今や、来年には115円や120円を視野に入れた動きとなると予想している。米共和党が上下両院とも過半数の議席を獲得したことで、トランプ次期大統領が選挙中に公約した政策の規模がある程度縮小されたとしてもすんなり議会を通過できるため、市場は先行きの期待感が広がっている。米景気動向への楽観的な見通しや金利上昇が続くようであれば、現在のドル高・円安局面も続く公算は大きいだろうが、110円台では上昇スピードは緩むだろう。今後はトランプ氏や新政権からのドル高をけん制するコメントが警戒される。

【足元の米指標は力強さを増す】
 市場予想を上回る強い米経済指標の発表が続き、12月の利上げが正当化される状況が一段と高まっている。10月の小売売上高は前年同月比4.3%増と、2014年11月以来の大幅な伸びとなった。国内総生産(GDP)の算出に使用される自動車ディーラーやガソリンスタンド、建築資材などを除くコア売上高は4月以来で最大の伸びとなった。10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.6%上昇と、2014年10月以来の高い伸びとなった。エネルギーが2013年2月以来の高水準(3.5%上昇)となったことが寄与。10月の生産者物価指数(PPI)もエネルギー価格の上昇受け、2014年12月以来の大幅な伸びとなり、30日の石油輸出国機構(OPEC)総会で8年ぶりの減産合意を履行することが決まれば、一段のエネルギー価格の上昇が見込まれ、物価全体をさらに押し上げる可能性が出てこよう。
 10月の住宅着工件数は前月比25.5%増の132万3,000件と、2007年8月以来の高水準となった。1戸建ては10.7%増と2007年10月以来の高い伸びとなり、全4地域で2ケタ以上の上昇となった。12日までの週の新規失業保険申請件数は23万5,000件と、1973年11月24日までの週以来の最低となった。より変動の少ない4週移動平均は25万3,500件と前週(26万件)から減少し、11月5日までの週の失業保険の継続受給者数は197万7,000人と前週比6万6,000人も減少し、2000年4月15日までの週以来の低水準となった。

【ユーロ圏の経済成長はぜい弱】
 独連邦統計庁から15日発表された7−9月期・GDP速報値は前期比0.2%増と、4−6月期の0.4%増から鈍化し、1年ぶりの低い伸びとなった。世帯と政府の最終消費支出の増加も、機械・設備の固定資本形成の減少、貿易黒字の縮小などが成長鈍化の背景。欧州連合(EU)統計局から同日発表された7−9月期・ユーロ域内GDP改定値は前期比0.3%増、前年同期比1.6%増と、ともに速報値と変わらず。ドイツやスペインなどの成長が鈍化し、フランスはマイナス成長からプラスに転じ、イタリアは伸びがやや加速したが、全体では過去2年間、0.3%〜0.5%増の低成長から脱し切れていない。
 欧州委員会は9日に、ユーロ圏の2017年の経済成長率見通しを1.5%増と、5月時点予想1.8%増から下方修正した。英国のEU離脱問題を含む政治的な先行き不透明感の高まりや世界的な貿易の軟調さなどが理由。トランプ氏が米大統領選で勝利したことで、来月4日のイタリアの憲法改正の是非を問う国民投票やオーストリア大統領選挙の行方が注目されており、不確実性がさらに高まる可能性がある。2017年には3月にオランダ総選挙、4月末〜5月に仏大統領選挙、秋には独連邦議会選挙が控えている。政治の混乱が経済成長に影を落とす恐れが警戒されるなか、欧州中央銀行(ECB)による追加緩和措置が必要になる可能性が高まっている。ユーロ域内の物価上昇の弱さなどもあり、12月の理事会では来年3月までとなっている資産購入プログラムの期限延長や国際買い取り条件の緩和などが見込まれている。

【英中銀は利上げモードに】
 14日の週に英政府統計局(ONS)から発表された一連の経済指標をみると、イングランド銀行(英中央銀行)による利上げの時期が早まる可能性があるかもしれない。15日発表の10月のCPIは前年同月比0.9%上昇と前月(1.0%上昇)から鈍化するも、引き続き2014年10月以来の高水準。衣料と大学授業料の伸びが下回ったこととガソリン価格上昇が相殺したが、食品・エネルギーを除くコアCPIは前年同月比1.9%上昇と前月(1.4%上昇)から加速し、2012年5月以来の大幅な伸びとなった。
 16日発表の雇用統計では、7−9月(第3四半期)の失業率が4.8%に低下し、2005年第3四半期以来の低水準となった。第3四半期の労働者数(16〜64歳)は3,180万人で、前期を4万9,000人、前年同期を46万1,000人、それぞれ上回った。雇用者数の伸びは第2四半期の17万2,000人増から鈍化。失業者数は160万人で、前期を3万7,000人、前年同期を14万6,000人、ともに下回った。就労率は74.5%に達し、1971年の比較可能な統計後の最高水準にある。17日に発表された10月の小売売上高指数は前年同月比7.4%上昇し、42カ月連続して前年同月を上回り、2002年4月以来の高い伸びとなった。オンライン売上高指数(25%上昇)が最大に寄与するとともに、衣料品売上高指数は5.1%上昇し、2014年3月以来の高い伸びとなった。


【トランプ政権への期待で沸くNY証券取引所】

【主要経済指標・イベントレビュー】
14日 日本第3四半期・国内総生産(GDP)速報値:前期比+0.5%
15日 7−9月期・独GDP速報値:前期比+0.2%
   英消費者物価指数(CPI、10月):前月比+0.1%、前年比+0.9%
   英コア生産者物価指数(PPI、10月):前年比+1.9%
   7−9月期・ユーロ域内GDP改定値:前期比+0.3%
   米小売売上高(10月):前月比+0.8%、自動車除くは前月比+0.8%
16日 英失業率(ILO方式):第3四半期は4.8%
   米PPI(10月):前月比0.0%、コアは前月比-0.2%
   米鉱工業生産指数(10月):前月比変わらず
17日 英小売売上高指数(10月):前月比+1.9%
   ユーロ圏消費者物価指数改定値(10月):前年比+0.5%
   米CPI(10月):前月比+0.4%、コアは前月比+0.1%
   米住宅着工件数(10月):前月比+25.5%の132万3,000件
   米週間新規失業保険申請件数:23万5,000件
18日 米景気先行指数(10月):前月比+0.1%

【11月21日からの週の注目ポイント】
21日 日本貿易統計(通関ベース、10月)               ☆☆
22日 ユーロ圏消費者信頼感速報値(11月)              ☆☆
   米中古住宅販売件数(10月)                  ☆☆
23日 日本市場休場(勤労感謝の祝日)
   独製造業購買担当者指数(PMI)速報値(11月)         ☆☆
   ユーロ圏製造業PMI速報値(11月)              ☆☆
   米耐久財受注(10月)                    ☆☆
   米週間新規失業保険申請件数                 ☆☆
   米新築住宅販売件数(10月)                 ☆☆☆
   米ミシガン大消費者信頼感指数確報値(11月)          ☆☆
   米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録公表           ☆☆☆
24日 第3四半期・独GDP改定値                  ☆☆☆
   独Ifo企業景況感指数(11月)                 ☆☆
   米市場は休場(感謝祭の祝日)
25日 日本全国CPI(10月)、東京区部コアCPI(11月)       ☆☆☆
   第3四半期・英GDP改定値                  ☆☆☆
*重要度を3段階で表示

2016年11月21日

(みんかぶ/NYのもののふ)

株式会社みんかぶ NYのもののふ(ペンネーム)

担当
商品先物・金融市場
経歴
1994年から商品先物業界で市況作成・アナリスト業務に従事。主に工業品銘柄を担当し、1999年からは投資情報会社のニューヨーク駐在員としてニューヨーク在住。主に市況作成に従事。現在は、原油中心で為替、貴金属、穀物に関する情報も配信。
読み手に容易に理解していただけるような情報配信を目指している。

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