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外為マーケットコラム

一本調子のドル高続くか微妙

 ドル・円は25日に一時、1ドル=113.90円と8カ月ぶりの水準へ上昇。トランプ次期米大統領の政策期待や米金利上昇などが引き続きドルの押し上げ要因となるなか、9日に101.20円へ急落した後の反発率は12%を超え、チャート上(週足ベース)では一目均衡表の雲のレンジの中間まで切り上がっている。足元の米経済指標が予想以上に改善しており、ニューヨークダウの1万9,000ドル乗せを筆頭に世界的な株高や米債利回りの上昇が続いている。景気の先行き楽観ムードが崩れなければ、ドル・円相場の上昇基調が続く公算は大きく、昨年高値(125.86円)から今年9月安値(99.00円)までの下げ幅に対する61.8%戻し相当の115.60円が次の上値目標となりそうだ。同水準を上抜けば120円を視野に入れた局面となるかもしれないが、米企業にとって足元のドル高進行は懸念材料であり、今の材料だけで一本調子のドル高・円安が続くかは微妙なところで、ひとまずは修正局面を迎えてもおかしくないのではないか。

【米サイドからの口先介入の可能性も】
 主要6通貨に対するドル指数は24日に102.05と、2003年3月以来の水準へ上昇。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の方向転換観測などをきっかけにした新興国市場から米国への資金巻き戻しから、ドルは2014年半ばから2015年春にかけて25%前後も上昇した。その後は上げ止まっていたが、トランプ次期米大統領の誕生を受けて再びドル独歩高の様相を強めている。トランプ氏の掲げる公約が米経済成長を押し上げるとの期待感とともに、先行きの財政赤字拡大やインフレへの懸念から長期金利の指標となる10年物米債利回りが2.41%台と1年4カ月ぶりの高水準に乗せていることもドル高の一因となっている。
 ただし、今のドル高の流れはさすがに行きすぎで、米国民の利益を最優先する「アメリカ・ファースト」を主張するトランプ氏が、この状況を容認し続けることはないだろう。来年もドル高が続くとのムードが多勢を占めるなか、今後は上昇ピッチの速さが警戒されそうだ。100円でも為替レートの是正を求める自動車業界や、大統領選挙でトランプ氏を支持した製造業界などにとっては、足元のドル高進行はとても見過ごせない。また、どこかの時点で悪い金利上昇を意識する動きへと転じるかもしれない。市場からは、トランプ次期政権は貿易赤字にとても敏感で、ドルの押し下げを狙って口先介入かそれ以上の働きかけを実施してくる可能性があるとの声が聞かれる。

【追加利上げは早くても来年半ばか】
 市場は25日時点で、来月2日に発表される11月の米雇用統計に対して、失業率を4.9%と前月と変わらず、非農業部門雇用者数を前月比17万3,000人増と同16万1,000人増を上回ると見込んでいる。予想外に失望させられるようなものとならない限り、FRBが来月13〜14日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切るのは確実だろう。
 10月の全国コア消費者物価指数が8カ月連続してマイナスとなり、デフレ脱却に手詰まり感の強い日本銀行は金融緩和を続ける以外に策はない。欧州中央銀行(ECB)は来月8日の理事会で、来年3月までの資産購入プログラムの期限延長を含む新たな景気刺激策を打ち出すとみられ、米国と日欧の金融当局の政策の方向性の違いがドルを下支えよう。
 市場からは、来年の利上げペースが速まるのではとの期待感が出始めているとの声が聞かれるが、依然として発表される経済指標を見極める状況に変わりはない。FRBは、来月に短期金利の指標となるフェデラル・ファンド(FF)の誘導目標水準を0.50〜0.75%に引き上げた後も緩やかなペースでの利上げ姿勢を継続し、しばらくは様子を見るだろう。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFFレート先物の動向に基づき算出するフェド・ウオッチによると、25日時点で来年6月に0.75〜1.00%への引き上げられる確率が40%となっており、早期に追加利上げムードが高まるような状況にはないようで、利上げ期待を背景にしたドル高局面の終了が近づいているのかもしれない。

【ユーロ圏成長は緩やかに拡大へ】
 ユーロ圏の景況感の改善が続いている。23日発表の11月のユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)速報値は54.1と前月(53.3)から上昇し、11カ月ぶりの高水準となった。ユーロ圏経済をけん引しているのがドイツであることに疑いはなく、同時に発表された11月の独総合PMI速報値は54.9と、10カ月ぶりの高水準となった前月(55.1)からわずかに低下するも、今年これまでの平均(54.2)を上回り、サービス部門PMIは6カ月ぶりの高水準。独国内の新規事業の伸びや雇用改善が続く一方、人件費や複数の原材料費の上昇などが投入コストを押し上げ、11月の投入価格の伸びは4年8カ月ぶりの大幅なもの。24日に発表された11月の独Ifo企業景況感指数は、引き続き2014年4月以来の高水準となった。
 7−9月期・ユーロ域内総生産(GDP)は前期比0.3%増と1年ぶりの低成長となり、輸出の落ち込みなどからドイツも同0.2%増と1年ぶりの水準に減速したが、10〜12月期は成長ペースが加速する可能性が出てきた。ドラギECB総裁は21日の欧州議会で、中期的に2%弱のインフレ目標の達成に向けて、大規模な金融緩和政策を維持する必要があるとの認識をあらためて示しており、ユーロ域内の成長は緩やかに拡大する方向にありそうだ。

【10月の貿易収支は2カ月連続の黒字】
 財務省発表の10月の貿易統計速報値は4,962億円の黒字。前年同月比373.5%急増し、2カ月連続の黒字となった。輸出は自動車・鉄鋼などの減少から、13カ月連続して減少し、輸入もエネルギーの減少で22か月連続減少した。4−9月(上期)の貿易黒字は2兆4,579億円と、東日本大震災発生前の2010年上期以来の水準に回復したが、輸出・輸入ともに前年を下回り続けているのが気になる。原油安の恩恵が大きく、米国の低成長やユーロ圏の景気回復力の弱さ、中国の過剰設備など世界経済を取り巻く環境の悪さが、貿易の実態に影響を与えている。日本経済は3年ぶりに3四半期連続してプラス成長となっているが、外部環境の改善なしでは内需主導の成長回復も限界が出てきそうだ。


【クリスマスシーズンのNYエンパイヤ―ステートビル】

【主要経済指標・イベントレビュー】
21日 日本貿易統計(10月):4,962億円の黒字
22日 米中古住宅販売件数(10月):前月比+2.0%の560万戸
23日 独総合PMI速報値(11月):54.9
   ユーロ圏総合PMI速報値(11月):54.1
   米耐久財受注(10月):前月比+4.8%、輸送用機器除くは前月比+1.0%
   米週間新規失業保険申請件数:25万1000件
   米新築住宅販売件数(10月):前月比-1.9%の56万3000件
   米ミシガン大消費者信頼感指数確報値(11月):93.8
   FOMC議事録:大半が比較的早期の利上げを予想
24日 7−9月期・独GDP改定値:前期比+0.2%
   独Ifo企業景況感指数(11月):110.4
25日 日本全国コアCPI(10月):前年比-0.4%
   第3四半期・英GDP改定値:前期比+0.5%

【11月28日からの週の注目ポイント】
29日 日本雇用統計(10月)                     ☆☆
   独消費者物価指数(CPI)速報値(11月)             ☆☆
   7−9月期・米GDP速報値                  ☆☆☆
   米消費者信頼感指数(11月)                  ☆☆
30日 独雇用統計(11月)                      ☆☆
   ユーロ圏消費者物価指数速報値(11月)            ☆☆☆
   米ADP雇用統計(11月)                   ☆☆☆
   米個人所得・消費支出(10月)                ☆☆☆
   シカゴ購買部協会景気指数(11月)               ☆☆
   米中古住宅仮契約指数(10月)                 ☆☆
   米地区連銀経済報告(ベージュブック)             ☆☆
1日 中国製造業購買担当者指数(PMI、11月)            ☆☆
   ユーロ圏失業率(10月)                    ☆☆
   米週間新規失業保険申請件数                 ☆☆
   米ISM製造業景況指数(11月)                ☆☆☆
2日 ユーロ圏生産者物価指数(PPI、10月)             ☆☆
   米雇用統計(11月)                     ☆☆☆
*重要度を3段階で表示

2016年11月28日

(みんかぶ/NYのもののふ)

株式会社みんかぶ NYのもののふ(ペンネーム)

担当
商品先物・金融市場
経歴
1994年から商品先物業界で市況作成・アナリスト業務に従事。主に工業品銘柄を担当し、1999年からは投資情報会社のニューヨーク駐在員としてニューヨーク在住。主に市況作成に従事。現在は、原油中心で為替、貴金属、穀物に関する情報も配信。
読み手に容易に理解していただけるような情報配信を目指している。

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