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外為マーケットコラム

トランプ相場は予測不可能

 ドル・円は11月30日に一時、1ドル=114.54円とほぼ9カ月ぶりの水準へ上昇。トランプ相場がもたらす株高・米債利回りの上昇がドルを押し上げるなか、米経済指標の予想以上の良好さや、石油輸出国機構(OPEC)の8年ぶりの減産合意による原油高なども一因となった。
 現時点では、トランプ相場は来年1月の大統領就任式前後まで続く可能性が高そうだ。政策期待が根強い一方で、米大統領選挙翌日の11月9日以降のすさまじいドル高に対する警戒感も広がっているとみられ、一段のドル高・円安が進むのかどうかの判断は引き続き難しいところ。主要6通貨に対するドル指数はすでに2003年春以来の高値圏にあり、ドル高による米輸出企業へのダメージが懸念され、トランプ次期大統領もしくは新政権メンバーなどからドル高を強くけん制する発言がいつ出てきてもおかしくはない状況だ。
 チャート上では、昨年の高値(125.86円)から今年の安値(99.00円)までの下げ幅に対する61.8%戻し相当の115.60円が目先の上値目標としたいところだが、1日の値動きが荒く、具体的な数値を予測するのは不可能な状況に変わりはない。トランプ氏の発言や金融市場次第で120円を超えてしまうようなドル高・円安が進行する可能性もあれば、100円方向のドル安・円高に一変してしまう可能性もあるのが現状ではないか。

【経済指標良好も悪い金利上昇を警戒】
 次期米大統領にトランプ氏が選出されて以降、積極的なインフラ投資や巨額減税などを含む政策への期待感から市場のムードが一変するなか、足元の経済指標も改善しているのが目立つ。
 7−9月期・実質国内総生産(GDP)改定値は前期比3.2%増加と速報値(2.9%増)から上方修正され、2年ぶりの高成長となった。企業の設備投資と民間住宅投資の弱さも、GDPの約7割を占める消費支出が速報値から引き上げられ、非住宅施設支出は2014年第1四半期以降で最大の伸びとなり、輸出も2013年第4四半期以降で最高となったことが寄与。税引き後の企業利益は7.6%増と前四半期(1.9%減)から急回復した。
 11月の消費者信頼感指数は107.1と前月から大きく上昇し、再びリセッション前の水準(2007年7月の111.9)方向へ改善。10月の個人所得は前月比0.6%増と4月以来の大幅な伸びとなり、連邦準備制度理事会(FRB)が政策判断の上で重視する食品・エネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)価格指数は前年比1.7%上昇と3カ月連続して同水準の伸びと安定して推移。
 11月のシカゴ購買部協会景気指数は昨年1月以来、11月のISM製造業景況指数は5カ月ぶりの高水準となった。11月の雇用統計では、失業率が4.6%と約9年ぶりの水準に低下し、非農業部門雇用者数も17万8,000人増と予想(17万5,000人増)を上回った。13−14日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げは確実だろう。
 ただし、10月の中古住宅販売仮契約指数は前月比0.1%上昇と前月(1.4%上昇)から大きく低下。トランプ氏の大統領選挙勝利後、30年物固定の住宅ローン金利は4%台へ急上昇している。急激な金利上昇による先行きの住宅市場や自動車販売などへの影響が懸念され、どこかの時点で「悪い金利上昇」に焦点が移る可能性は十分に考えられるところ。

【OECDは来年の世界成長率見通しを上方修正】
 経済協力開発機構(OECD)は11月28日に発表した半期の経済見通しで、2016年の世界成長率を2.9%と9月時点予想を据え置き、2017年は3.3%と同3.2%から上方修正した。2018年は3.6%と、2011年以来の高い伸びとなると予想。グリア事務局長は、5年間の失望的な弱気見通しから、緩やかに成長が拡大するとの見方を示した。OECDによると、インフラへの巨額投資や減税などを掲げるトランプ氏の米大統領選勝利を受け、マクロ経済政策の方向性が大きく変化するとの期待感が広がったとのこと。
 他地域同様に日本も今年と来年の成長見通しが引き上げられた。2018年は前年から成長が鈍化し、消費者物価指数は1.25%へ上昇することが見込まれている。今年度の3度の補正予算と財政再建の一時休止が円高の影響を抑えていると指摘し、労働不足と、企業収益が歴史的な高水準となるなか、民間消費の上昇が続く見通し。日本銀行は2%超で物価を安定させる目標の達成まで金融緩和政策を継続すべきとし、生産性や労働人口を増やすためには構造改革が不可避との見方を示した。また、今以上に速いペースでの成長による公的債務を減らすのが重要で、公的債務は2018年までに対国内総生産(GDP)比240%に達する見込みとのこと。
 各国別の見通しは以下の通り。()内は9月時点予想

2016年2017年2018年
米国1.5%(1.4%)2.3%(2.1%)3.0%
ユーロ1.7%(1.5%)1.6%(1.4%)1.7%
日本0.8%(0.6%)1.0%(0.7%)0.8%
中国6.7%(6.5%)6.4%(6.2%)6.1%

【ECBの量的緩和継続は必要】
 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は11月28日、欧州議会委員会で証言し、今月8日の理事会で景気刺激措置の継続の是非について決定すると述べた。ドイツの輸出減少などから7−9月期のユーロ域内経済成長は停滞したが、足元の景況感は改善が続いており、10−12月期の景気回復が見込まれている。域内経済は引き続きECBによる緩和政策の継続を必要としており、市場からも来年3月で終了する月800億ユーロの資産購入プログラムの期限延長を予想する声が多く聞かれる。11月のユーロ圏消費者物価指数速報値は前年比0.6%上昇と2014年4月以来の高い伸びとなったが、前月(0.5%上昇)からの加速ペースは鈍く、エネルギーと食品を除くコア消費者物価指数は0.8%上昇と前月から横ばいで、ECBの目標とする2%の物価上昇にはほど遠い状況に変わりがないことも一因だ。政策委員会メンバーのストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁は、資産購入規模のペースを落とす案が検討される可能性を示唆した。ECBはまた、理事会終了後に最新の経済指標を発表する。


【ニューヨークにもクリスマスシーズン到来】

【主要経済指標・イベントレビュー】
29日
日本完全失業率(10月)
:3.0%
独消費者物価指数(CPI)速報値(11月)
:前月比+0.1%、前年比+0.8%
第3四半期・米GDP改定値
:前期比+3.2%
米消費者信頼感指数(11月)
:107.1

30日
独雇用統計(11月)
:失業率は6.0%、失業者数は前月比5000人減
ユーロ圏消費者物価指数速報値(11月)
:前年比+0.6%
米ADP雇用統計(11月)
:21万6000人増
米個人所得・消費支出(10月)
:所得は前月比+0.6%、支出は前月比+0.3%
シカゴ購買部協会景気指数(11月)
:57.6
米中古住宅販売仮契約指数(10月)
:前月比+0.1%
米地区連銀経済報告
:米経済は引き続き緩やかな拡大続く

1日
独製造業購買担当者指数(PMI)改定値(11月)
:54.3
ユーロ圏製造業PMI改定値(11月)
:53.7
米ISM製造業業況指数(11月)
:53.2

2日
米雇用統計(11月)
:失業率は4.69%、非農業部門雇用者数は17万8,000人増

【12月5日からの週の注目ポイント】
5日
独サービス部門PMI改定値(11月)               ☆☆
ユーロ圏サービス部門PMI改定値(11月)            ☆☆
ユーロ圏小売売上高(10月)                  ☆☆
米ISM非製造業景況指数(11月)               ☆☆☆

6日
独製造業新規受注(10月)                   ☆☆
第3四半期・ユーロ域内総生産(GDP)確定値          ☆☆☆
米貿易収支(10月)                      ☆☆
米製造業新規受注(10月)                   ☆☆

8日
第3四半期・日本GDP改定値                 ☆☆☆
日本国際・貿易収支(10月)                  ☆☆
中国貿易収支(11月)                     ☆☆
欧州中央銀行(ECB)理事会、政策金利発表           ☆☆☆

9日
中国消費者物価指数(CPI、11月)               ☆☆
米ミシガン大消費者信頼感指数速報値(12月)          ☆☆

*重要度を3段階で表示

2016年12月5日

(みんかぶ/NYのもののふ)

株式会社みんかぶ NYのもののふ(ペンネーム)

担当
商品先物・金融市場
経歴
1994年から商品先物業界で市況作成・アナリスト業務に従事。主に工業品銘柄を担当し、1999年からは投資情報会社のニューヨーク駐在員としてニューヨーク在住。主に市況作成に従事。現在は、原油中心で為替、貴金属、穀物に関する情報も配信。
読み手に容易に理解していただけるような情報配信を目指している。

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